新体制を迎えるデサント 試される伊藤忠の力量

2019/05/02 06:28 更新


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【知・トレンド】《ニュースサクサク》新体制迎えるデサント 試される伊藤忠の力量 デサント社員の士気向上が不可欠

 伊藤忠商事グループがTOB(株式公開買い付け)によりデサント株の保有率を40%に高めたことで昨年夏からの両社の対立に決着がついた。TOB終了後、伊藤忠の動きは速かった。すぐに話し合いを重ね、デサントは3月25日の取締役会で、社長が石本雅敏氏から小関秀一前伊藤忠専務執行役員繊維カンパニープレジデントへ交代するなど現経営陣を一新する人事を決め、6月から新経営体制がスタートする。

(高田淳史)

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大事な〝金の卵〟

 なぜ伊藤忠はデサントにこだわるのか。それは今後高い収益成長が見込める〝金の卵〟だからだ。デサントの17年度の経常利益97億円は、売り上げでは400億円ほど差をつけられているミズノを上回る水準。しかし伊藤忠は満足しない。今期を最終年度とするデサント3カ年経営計画の数値目標が未達に終わるからだ。

 3年前と比べて売り上げは伸びているものの利益が伸びていない点、特に純利益が当初100億円の見込みが65億円にとどまることを問題視した。しかも頼みの韓国事業はこの2年減益が続く。

 デサントも韓国事業をテコ入れしてゴルフ関連で在庫を処理し「今期で底を打つ見込み」としたが、伊藤忠は納得しない。デサントの第3四半期までの利益が苦戦し、地域別でも日本事業の売り上げは横ばいだが利益は前年同期比で半分以下のためだ。

 デサントと伊藤忠の関係は長く深い。デサントが伊藤忠、東洋紡績(現東洋紡)、米マンシングウェア社と提携して「マンシングウェア」の販売を始めたのが64年。71年には伊藤忠がデサントに資本参加した。デサントは過去2回経営不振に陥った。マンシングウェアの在庫過多になった84年と「アディダス」のライセンス契約が終了した98年だ。その時には「伊藤忠出身者が思い切ったリストラを進めた」と小関氏。伊藤忠は今回も危機感を持ち、強硬策に出た。

待てない理由

 伊藤忠にも待てない理由がある。今期の連結純利益(IFRS)は過去最高の5000億円を見込むが、上期に中国・CITIC株の評価見直しで1433億円の損失を計上。ユニー・ファミリーマートの連結子会社化に伴う再評価益等でほぼ相殺したがダメージは大きい。

 繊維カンパニーも盤石ではない。同カンパニーの純利益は14年度こそ320億円だったが、この間は資産の見直しや在庫圧縮などを進め、100億~200億円台で推移する。17年度の純利益は伊藤忠全7カンパニーのうち7番目。繊維カンパニーの存在感を高めることは喫緊の課題だ。

 その中でデサントの持つ潜在力は魅力に映る。東京五輪、22年の中国・北京冬季五輪などに向けて収益をさらに伸ばし、大きな成長が期待できる。「自分たちの意見を聞いて欲しい」とデサントに迫ったのはこうした理由からだ。TOBに踏み切ったのは逆鱗に触れたこともある。岡藤正広伊藤忠会長CEO(最高経営責任者)は常々「商社は、どうすれば外されないか、中抜きされないかを考えないといかん」と話す。その伊藤忠にデサントは「投資ファンドを活用したMBO(経営陣による企業買収)を提案した」(伊藤忠)。またTOB中にデサントが示したデサント新取締役会体制は、5人の取締役のうちデサント1、社外4。伊藤忠は入らない構想だった。

三方よしの精神で

 これからは伊藤忠の力量が試される。小関氏がデサント社長に就くことで伊藤忠が重視する「か・け・ふ」(稼ぐ、削る、防ぐ)を実践し、中でも経費など〝削る〟を徹底した低重心経営で増益に取り組むだろう。それと複数の収益の柱の確立。中国事業のスピードアップと日本事業の収益向上を進めて収益の柱を増やし、着実な成長を目指すとみられる。

 中国では中国・スポーツアパレル、アンタとの協業が鍵だ。協業するデサント・チャイナ事業は拡大しており、中国事業に精通する小関氏が前面に立つことで協業の拡大が進みそうだ。日本事業ではワコールホールディングスとの包括的業務提携を継続するかどうか。当面は続けるだろうが、新たな取り組みは互いのメリットを見極めた上での判断になる。

 今回、結果的に敵対的TOBになったダメージは大きい。この影響をどう早く回復させるかが課題だ。特にデサント社員の士気の向上や企業イメージ毀損(きそん)の回復で迅速な手が求められる。

 伊藤忠は「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)を大事にする。「企業はマルチステークホルダーとの間でバランスの取れたビジネスを行うべき」との考え方だ。デサントは伊藤忠と今後の経営方針などに関し協定書を結ぶ予定。その内容は三方よしの精神とも合致する。

 業界からは「デサントの物作りの強さ、こだわりが好き。その良さをなくさないでほしい」「資本の力には負けたが頑張ってほしい」。デサントを応援する声は強い。

(繊研新聞本紙19年4月8日付)


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