デサントと伊藤忠商事、対立収束へ

2019/03/27 06:25 更新


 デサントは25日、社長交代とともに、かねて策定・合意を目指していた経営体制に関する協定書を、伊藤忠商事と締結する予定であると発表した。これで昨年夏以降続いていた両社の対立は収束する。

 新たな経営体制では、現取締役10人のうち、韓国事業を統括する金勳道氏を除く9人が退任。さらに伊藤忠からは、小関秀一専務執行役員兼繊維カンパニープレジデントが社長に就任するほか、繊維カンパニー出身でエドウイン代表取締役会長などを歴任した久保洋三氏が専務執行役員に就く。今後は締結予定の協定書を元に、社内融和や中国事業の加速などに取り組む。

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 伊藤忠と締結を予定している協定書では、「株主共同の利益のための自主独立経営が可能となる体制の確立」を明記。デサントが望んでいた「少数株主の利益を守り、大株主とビジネスパートナーの利益相反を防ぐ」点に配慮した形だ。

 ただし次期経営体制では、取締役数を6人に削減したうえで、デサント出身者2人、伊藤忠出身者(原則として転籍者)2人、独立社外取締役2人という伊藤忠案が採用された。デサント側は次期取締役構成で「独立社外取締役で過半数」にこだわってきたが、退けられた。

 6月開催の定時株主総会・取締役会では役員メンバーも一新する。韓国事業を引っ張ってきた金デサントコリア社長が昇格する一方で、田中嘉一専務執行役員最高製品責任者や、三井久常務執行役員、羽田仁常務執行役員最高戦略責任者、辻本謙一常務執行役員最高財務責任者ら、これまで石本雅敏社長を支えてきた幹部がそれぞれ退任する。

 さらに、伊藤忠繊維畑出身の久保氏を専務執行役員に迎え入れる。久保氏は伊藤忠の執行役員ファッションアパレル部門長を経て、12年から繊維カンパニーエグゼクティブバイスプレジデントを兼任、14~16年にはエドウイン代表取締役会長を務め、現在は常務執行役員食料カンパニープレジデント。

 今後は社内融和と中国事業の加速などが課題となる。TOB(株式公開買い付け)では労働組合と非組合員を含む国内従業員の約9割が反対を表明した。新社長の下、社内のわだかまりを無くし、中国事業のスピードアップに取り組めるかが焦点だ。

◆伊藤忠のコメント

 伊藤忠商事は、「経営体制を含めた内容を両社で合意できたことを歓迎する。デサントの企業価値向上のため、今後両社で協調してさらに事業拡大していく」とコメントした。



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