データに基づく経営判断を支援し、業務効率、顧客維持とロイヤルティーを向上させるCRM(顧客情報管理)は、ビジネス環境において重要性がますます高まっている。CRMをどのような目的で活用しているかを聞いた今回初めてとなる「CRM関連アンケート」では、88社から有効回答を得た。
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顧客化施策に重点
CRMでのKPI(重要業績評価指標)、重視する点の自由記述を分類したところ、F2/F3転換をはじめとする顧客化を求めている意見が有効回答社数の42.9%となる36社と最多で、LTV(顧客生涯価値)向上(27社)、会員拡大(24社)と続いた。
CRM関連データを活用した施策の10項目からの選択回答では、「セグメントしたコミュニケーションに活用」が群を抜いて多く、回答社数の約8割の69社(グラフ)が答えており、KPIの回答と同じく顧客化に重点が置かれているのがわかる。
回答企業は製造卸、SPA(製造小売業)、輸入卸、ディベロッパー、小売業、百貨店、専門店、EC専業、通販とほぼ全業態から出ている。効率的な顧客化での適正なアプローチの手段として、CRMは業態を問わず有用であると認識されている。
このほかデータ活用の施策で半数を超えたのは「会員プログラムの運用に活用」48社、「複数チャネルの顧客データの統合」45社。会員プログラム運用はセグメントしたコミュニケーションに近いものと思われる。複数チャネルの顧客データ統合は、重複などロスをなくすデジタルならではの作業効率化に重宝されているのがわかる。
そのほかの記述回答は「MD計画に活用」(SPA)、「リピート率の向上」(製造卸)、「リピーター限定クーポンの活用」(EC専業)だった。
既存客定着に効果
施策に関する記述で顧客に関するものでは「既存顧客の定着率・クロスセル・アップセルなどに一定の効果が見られた」(EC専業)、「複数チャネルの顧客データの統合で情報の一元化ができ、客の利便性向上につながった」(輸入卸)、など着実に手応えを得ているものが見られる。
このほか「店舗・ECの会員管理を自社アプリで一元化し、導入2年で会員が2倍以上増加」(製造卸)、「戦略や施策の立案から効果検証までのPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルのスピードと品質向上ができている」(同)、「関係者のデータ閲覧や自主的な簡易分析がKPI改善に寄与している」(ディベロッパー)など会員拡大や施策支援での効果を認める意見が多く見られる一方、「まだ大きな成果は出ていない」(百貨店)とするものもある。
整合性と精度向上
今後の課題に関する記述では「対策実行サイクルのスピード改善と顧客管理の仕組み化」(専門店)、「ユーザーをより深く理解するために、今後はデータの整合性を高める必要がある」(SPA)など、CRMを最大活用するための理解と精度向上などが挙げられている。また「顧客データの社内での活用促進」(製造卸)のように、EC運営でもよく見られる社内での認知、理解への課題も示されている。
展望を示す記述には「AI(人工知能)を用いたCRMが今後更に売り上げに貢献すると推察」(製造卸)、「AIを活用した顧客理解の促進と施策実施」(専門店)、「AI活用で分析工数の削減や内容の高度化、意思決定のスピードを上げていきたい」など、AIを活用したCRMに期待するものが多かった。
〈CRM関連アンケート協力企業〉
アーバンリサーチ、青山商事、赤ちゃん本舗、アシックスジャパン、アダストリア、石川商店、イトキン、インターナカツ、ヴァンドームヤマダ、F・O・インターナショナル、エンドレス、岡本、オギツ、オンワードHD、川辺、キャン、栗原、クロスプラス、グンゼ、ケイ・ウノ、ゴールドウイン、コックス、コンプレックス・ビズ・インターナショナル、サダマツ、サマンサタバサジャパンリミテッド、三陽商会、シップス、シティーヒル、JAMトレーディング、シャルズ、ジュニアー、ジュピターショップチャンネル、ジュン、ジョイックスコーポレーション、白鳩、ジンズ、スタージュエリーブティックス、すててこ、ストライプインターナショナル、スノーピーク、そごう・西武、ダイアナ、ダイドーフォワード、大丸松坂屋百貨店、高島屋、タビオ、ダブルエー、チュチュアンナ、土屋鞄製造所、TSI、デサント、東京ソワール、東京デリカ、豊田産業、ナルミヤ・インターナショナル、ニューン、ハニーズHD、パル、パルコ、バロックジャパンリミテッド、阪急阪神百貨店、ビームス、ヒロタ、ファミリア、福助、藤井大丸、ブランシェス、フリーインターナショナル、ブルーミング中西、プレイ・プロダクト・スタジオ、ベイクルーズ、ヘヴンジャパン、マイティ、マッシュHD、三井不動産、ミルク、モデラート、山喜、ヤマトインターナショナル、ユナイテッドアローズ、リーガルコーポレーション、ルックHD、ルミネ、レリアン、ワールド、ワールドパーティー、ワコール、ワシントン靴店
(50音順、HDはホールディングス)
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来週から「有力企業に聞く、CRM現在地」を連載します。大手専門店やスポーツ企業、DtoC(消費者直販)ブランド、商業施設と様々な業種のCRM戦略の今をお伝えします。また、今回実施した「CRM関連アンケート」からのミニ分析記事も同時掲載します。