機能や持続可能性が重要に
新型コロナウイルスの感染拡大は、消費者の価値観やライフスタイルに大きな影響を与えている。ファッションテキスタイルでは、「ニューノーマル」(新常態)で変わる働き方、安心・安全やサステイナビリティー(持続可能性)への意識の高まりを見据えた開発が活発だ。
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■清潔、快適に関心
ファッション衣料用途では落ち着きつつあった機能素材の打ち出しが、再び盛り上がっている。とりわけ、当初はマスクやユニフォーム関連だけかと思われた抗菌、抗ウイルス素材は、国内外のカジュアル衣料用途で引き合いが増えており、拡充する動きが活発だ。
宇仁繊維は新たに、制菌・防カビ・抗ウイルス加工「デオファクターアンチウイルス」を施した3品番などを加える。清潔抗菌素材「ルミフレッシュ」や防汚加工、吸湿速乾加工などを揃える「5・GOテックプロジェクト」も強化する。同興商事は、スパンデックス糸をシルクで覆った「ダイナミーシルク」で、ぬめり感のあるナイロン芯、抗菌性のあるヨモギ混再生糸の芯などコアヤーンのバリエーションを充実。ヨモギ混はシルク本来の抗菌性とヨモギ成分の抗菌性があり、「求める先は増えている」という。大松は、綿のジャージー企画「ミッセーラ」に抗菌・抗ウイルス機能繊維「クレンゼ」を取り入れる。
ストレスフリーも重要な切り口になっている。今後も取り入れる企業が増えていくとみられるテレワークで、きれいに見えて手入れが簡単な服が求められているからだ。衣料消費が全体に振るわない中で、リラクシングウェアの売れ行きが伸びていることも背景にある。快適な着心地に直結する機能や、ウォッシャブルなどのイージーケアに関心が高まっている。
エイガールズは、新たに仕掛けた丸編みのシャツ地企画が好評だ。46ゲージ の緻密(ちみつ)な編目でドレスシャツのような品の良さがありながら、丸編みの伸縮性や軽さ、柔らかさを兼ね備え、変化するワークスタイルの需要を捉える。洗えるシルクの消臭糸を使った「ホワイト」や、ドライタッチで伸縮性に優れる綿100%「ゼロ」も揃えた。
サンウェルは、麻のような質感と風合いのポリエステル「リフラクス」が、イージーケア性やウォッシャブル性、ストレッチ性から今春夏物でも好評で、バリエーションを広げる。
瀧定名古屋は、都市生活を快適に過ごすのに適した生地で構成する「ユーティリティ」で、イージーケアやサステイナブル対応などを合わせたトラベラー向けを提案。撥水(はっすい)機能のナイロンで着心地が良いツーウェーストレッチ、仕立て映えと快適性を併せ持つトリコットも推す。
■本格普及に期待
パンデミック(世界的大流行)がサステイナブルファッションを後押しし、テキスタイル企業が強化してきたサステイナブル素材が本格的に浸透する兆しが出てきた。今シーズンも「リサイクルポリエステルを重点素材の一つにした」(川越政)、「SDGs(持続可能な開発目標)対応を強め、リサイクルポリエステルやオーガニック綿を重点にすえる」など、各社の提案の主軸になっている。
競争が激化するなか、アパレルの目線に立った提案や見せ方に工夫の余地がありそうだ。「製品への取り込み方への問い合わせが増えている」とは、スタイレム。これまで動物愛護や森林保護、オーガニック綿、リサイクルなどのカテゴリーで集積して提案してきた。今回はアパレルの要望に応え、オーガニック綿やキュプラ、リサイクルポリエステルなどを各スタイルに落とし込んだ。
東レも「フェミニン」「ナチュラル」など五つのコーナーに、リサイクル繊維「エコユース」、トレーサビリティー(履歴管理)を確保したペットボトルリサイクル繊維「&+」(アンドプラス)を織り交ぜて提案した。
意匠の独自性や新しさも追求された。柴屋は「サステイナブル素材はナチュラル感や新表情が求められる」とし、天然素材を中心にSDGsの視点を打ち出した。人気の天日干し加工は綿や綿・麻のほか綿・ポリエステルも加え、20マークに拡大。ワッシャー加工やムラ染めを併用し、ナチュラル感を加えた。ドラム乾燥や重油を使わず水を節約し、二酸化炭素排出量も抑制する。
(繊研新聞本紙20年7月2日付)