リユーザブルな梱包(こんぽう)材で配送時の脱炭素化へ――物流サービスのコンベイ(東京、梶田伸吾代表)は、繰り返し使える「シェアバッグ」を開発し、それを使った物流の仕組みを構築している。23年4月にサービスを開始し、アダストリアの子会社のアドアーリンクとサーフファッションのリブルーで導入。「サーキュラーエコノミー(循環型経済)の取り組みを強化でき、サステイナブル(持続可能な)経営にも貢献する」と注目が高まっている。
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リサイクルの先
22年6月に設立。世界的に課題のCO2(二酸化炭素)など温室効果ガス排出量の削減に取り組む。「ECが広がり、歯ブラシ1本でも家まで宅配する時代になったが、様々な問題も出ている」と梶田代表。同社によると、使い捨ての段ボールやビニール袋など梱包材は国内で年間150万トン廃棄され、90%が大量の水や電気でリサイクルされている。その過程で生じるCO2を軽減する物流の仕組みが必要と考えた。
同サービスは、パートナー企業のサイトで梱包方法を選択、届いたシェアバッグは1週間以内にポストに投函してコンベイに返却する流れ。返却が確認できれば消費者に購入時に使えるクーポンを配布。シェアバッグはコンベイで洗浄・修繕し、パートナー企業に再び提供する。
日本郵便と打ち合わて開発したシェアバッグはポリエチレン製で、萩原工業(岡山県倉敷市)で縫製する。生地は「海外産が一般的」だが国産を採用。素材から製造まで国内で一貫し、トレーサビリティー(履歴管理)を可視化する。リユースは50~100回を目標にし、寿命を迎えたものはアップサイクルして再製品化するほか、萩原工業の技術でペレット化して再利用する。アパレル製品に特化し、3サイズある。
KPI(重要業績評価指標)の一つに購入者の30%以上の利用を掲げる。リユーザブルバッグで、世界的に先行する欧州の平均だ。アドアーリンクもリブルーも環境意識が高い消費者に支持され、現状の利用率は30%。開封が簡単で、梱包材の解体やゴミ出しのストレスを減らせる上、環境に優しい行動が気軽にできる点が評価されている。
欧州の事例では、リユーザブルバッグを20回使った場合、製造と配達で発生するCO2の排出量は段ボールと比べて約70%以上削減できるとの調査結果があるとし、企業の持続可能な経営の一助になるとしている。
思いが通じること
描くのは「美しい物流」。梶田代表は「人と人の思いが通じ合っている瞬間に美しいと感じる」と話す。物流も同様で「ただ物を運ぶだけではなく、人と人をつなぐもの」。シェアバッグの利用は、企業の環境課題に対する意志への共感とも言え、ここに「企業と消費者の思いの交換が生まれる」。
その実現には消費者を巻き込むのが肝要。消費者の心が動いて起きた行動が環境課題の改善に貢献する。そうした文化をアパレル企業や宅配業者とともに作るのが理想だ。システムは現在、ショピファイにのみ対応し、API連携(ソフトウェア同士の連携)も準備中。