「シャネル」クルーズコレクション発表 デジタルで配信

2020/06/10 11:00 更新


 コロナ禍であらゆるブランドが20~21年クルーズコレクションの発表を見合わせる中で、「シャネル」がデジタル配信によるクルーズコレクションを、約7分の動画と写真で発表した。テーマは「地中海を巡る旅」。「最初は、カプリを思い描いていました。ショーの開催予定地でしたが、ロックダウンの影響で実現することはなく、その状況に対応する必要に迫られました。すでに決定していたファブリックを活用し、さらに広い概念で地中海――ユーカリの香りに包まれ、ブーゲンビリアのピンクの色彩にあふれた島々――を巡る旅へとコレクションを進化させたのです」とヴィルジニー・ヴィアール。

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 ラグジュアリーブランドが相次ぎプレコレクションの発表を取りやめている中で、クルーズコレクションを発表したことについて、ヴィアールは「カール(・ラガーフェルド)もそうだったが、職人たちにいつも仕事があるように心掛けてきた。特に今、そうした配慮が必要だ」と仏ル・フィガロ紙に語っている。

 海岸に面した美しいテラス、そこにたたずむモデルの髪を揺らす風、ナチュラルなムードいっぱいのコレクションはシャネルの伝統を背景にした柔らかなムードにあふれている。ツイードタッチのトリミングジャケットやセットアップは、軽やかなショートパンツ丈のコーディネート。白いツイードドレスは、フラワーレースを切り替えたストレートライン、パープルやピンクのツイードスーツは水着のようなブラトップと重ねられる。


 デニムはロゴプリントのスカーフのような布と切り替えてフレアパンツにしたり、襟のない羽織る感覚のジャケットにしたり。ホールターネックドレスやミドリフトップは素肌をのぞかせながら、風をはらんで布が優しく揺れ動く。ブラトップに重ねたオーガンディの黒いルックは、エレガントな透け感と軽やかさに包まれる。



 シンプルでありながら上質感とリラックスな気分にあふれたコレクション。いつもに比べれば点数は決して多くはないが、クルーズコレクションとして普遍的なアイテムにシャネルらしさが閉じ込められている。手仕事を散りばめながら普遍性を感じさせること。そこにシーズンを超えても、コーディネートできる可能性を感じる。1シーズン着て終わりではない提案のようにも受け取れるコレクションは、今後のファッションの在り様に対するヴィアールの考え方が貫かれているように思える。

(小笠原拓郎)



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