ほとんどの事業戦略において、競争優位性の構築こそが戦略の前提条件になっているのだが、これは思考停止・状況認識力の欠如と言えるのではないだろうか。いま企業の成長に寄与しうるのは、どう競合と戦うかではなく、どう顧客を筆頭としたステークホルダーと絆を作るか、である。
競争戦略は時代遅れ
まず、なぜ競争優位性の追求ではダメなのかを読み解く。答えは①市場の変化②人の変化③資源の変化④お金の意味合いの変化⑤情報の変化の5点に集約できる。
まずは、市場の変化から見ていこう。大前提として、粗悪品は駆逐された、と認識してよいのではないか。もちろん、これは絶対の真実ではなく、いまでもECサイトで「クズをつかまされた」と憤ることもある。だが、相対的な優位性を質(もしくはコストパフォーマンス)の視点で実現することは難しくなっている。
次に、人の変化に目を向けたい。市場の変化に促されるように、人々は単純な機能優位性で何かを選ぶ必然がどんどんなくなっている。結果として、良い悪いではなく、好きか嫌いか、合うか合わないかという、より感覚的・価値的な視点が重要になっている。
これが意味しているのは、経営に最も枯渇していく資源が「非連続的・複層的な価値の創造力=イノベーション力」となったと言える。これを実現するには、契約条件だけではなく、(価値観と)合う合わないで就職先を決めるような、クリエイティブクラスの人材を採用できる魅力を持つことが最優先課題になったと言える。
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