私はBtoB(企業間取引)の営業として社会人の第一歩を踏み出した。お客様である大手企業の新製品の開発段階から関与し、日々数千点の部品を供給する仕事だ。日本の物作りの厳しさ、素晴らしさを体験した。与えられた仕事をきちんとこなし、仲間やお客様に迷惑をかけず、できれば事業に貢献することを目標にしていた。
ある日、本社の管理職の方から「戦略やマーケティングって分かる?」と聞かれ、「さっぱり分かりません」と答えた。当時の私は仕事をこなすことで精いっぱいだった。その方は「マーケティングや戦略は+αの努力で習得できる。この知識を持つと仕事が面白くなる」と教えてくれた。「なぜ売れる商品と売れない商品があるのか」「なぜ成長する企業と衰退する企業があるのか」などの問いに対する仮説を導くための羅針盤がマーケティングであると知り、私は勉強を始めた。
結果として中小企業診断士に合格、コンサルティング会社へ転職することとなった。マーケティング戦略の経験を積みたいと思ったからだ。そこで得た経験と知識は今でも私の背骨になっている。それは、ターゲットである顧客のインサイト(欲しいと思う気持ちの核心)を導き出し、戦略を描き、具体的な戦術に落とし込み、ゴールに向かってチームを導くこと、その流れを丁寧に実行するということだ。これこそがシンプルだが、成功への近道ということだ。
(ナルミヤ・インターナショナル社長 国京紘宇)
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。