中川政七商店と三菱地所のアナザー・ジャパン 学生スタッフが地域に入り学びと共感

2023/12/25 06:27 更新


地域産品を集めて販売した「アナザー・ジャパン」

 学生だけで小売店を運営するアナザー・ジャパンが1期目を終え、2期目に入った。アナザー・ジャパンは中川政七商店と三菱地所の共同プロジェクトで、地域産品を扱うセレクトショップ(東京駅日本橋口前施設内)。経験ゼロの学生が地域の事業者と交渉して仕入れ、自ら販促、集客し、店頭で接客し販売することで、事業や地域を学んでいこうというもの。学生スタッフがセミナーを開き事業の経験を報告した。

(武田学)

全国巡り商品探し

 同店は昨年3月に全国から応募があった学生スタッフ18人でスタート、8月に店を開き、1年間運営した。扱う産品を全国6ブロックに分け、ブロックごとに18人が6チームに分かれて地域に入って商品を探した。店舗はブロック別に2カ月ごとに品揃えを変えて18人全員で運営する。仕事は収支管理、コンセプト策定、商品選定・仕入れ、売り場づくり・プロモーション、接客、店舗オペレーションなど。

 各チームは対象ブロックを回って売りたい産品を探す。中部チームの場合、ブロック内で東海、甲信越、北陸とエリアが多く分かれていることから「分ければ分けるほど面白いチュウブ」をコンセプトとした。チーム3人で延べ91日間出張し商品を集めた。

 中四国チームのスタッフは愛媛県の真珠販売企業の宇和海真珠を訪問し、真珠にかける思いに触れた。アコヤ貝を育てている海も訪れ、物作りの現場や思いを体感した。

 店舗では売り上げ目標を立てて臨んだ。単価の底上げのできる商品セレクトを重視したほか、2週間ごとにテーマを決めてMDを組んだ。購入を期待できる地元関係者や友人、リピーターへのアプローチ、企業への中元販売や地方自治体(愛媛県西予市)との協業イベント販売、銭湯での出張販売など、事業者向け施策や店外施策も実施した。やはり売り上げの中だるみが課題で、MDや販促の工夫には試行錯誤を重ねた。

学生の発想に期待

 1年目の結果は売上高4235万円で赤字となった。ただ、資金面で支えるサポート企業を集めたほか、クラウドファンディングの実施、仕入れ先の取引条件への配慮などもあり、赤字を補えた。

 1期目スタッフだった藤田玲音さんは「うまくいったこと、いかなかったことを振り返って次に生かすという場数をこなすこと、良い施策であってもやり切れなかったことがあったので、やり切ることも大事だと思った」と経験を語った。取引先の宇和海真珠の松本哲哉社長は「真珠は中高年層が主力客層だが、学生の新しい発想での販売に期待するところは大きい」と述べた。

 現在、2期目のスタッフに交代し、8月からセトラー(スタッフ)個人の個性も重視したMDに力を入れている。毎年、スタッフが入れ替わって店舗を運営し、黒字化を目指す。事業運営を軌道に乗せた上で、28年に完成するトーチタワーに移転する計画だ。




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