「アナログ」な服と店で売るイデオロギー

2016/11/07 06:00 更新


 静岡県三島市の専門店「アナログ」を運営するギビングアンドギビング(電話055・981・6288)は今秋から、自店に導入した中古織機で自社生産するオリジナル商品「ダブルギビング」を本格化する。同時に、地方専門店に求められる役割はコミュニティーと見て、「パーマカルチャー」「オルタナティブライフ」をテーマに、提供者が自作する服を通じて人生の楽しさや喜びを提供する。

 中古織機での自作商品販売は春夏から開始した。幅22㌢ウールマフラーに絞って販売。2日に1本のペースで加藤正親ディレクターが自作する。現在は様々な色の糸を使った独自性のある生地作りにも挑んでいて、習熟すればウールパンツ、ジャケット、ベスト作りにまで持っていき、スタイリング提案していく考え。

 長年にわたって販売していた、メーカーや工場発注の自社商品はやめた。単純なSPA(製造小売業)ではなく、さらに細かいサービスこそが洋服屋に必要との考えからだ。「これからは、どんな生活を送っているかが分かる人間が商品を自作し、生活を描ける提案をすることが、洋服屋の存在価値になる」と加藤さんは読んでいる。

 店は現在、ヨガ教室とカフェ運営を軸に変え、地元・三島で男女の客から支持を得ている。客は心身を癒やす目的で来店。特にカフェはコミュニケーションや仕事での悩み解消を求めてやってくる。そういった客と交流、コンサルティングをしつつ、服を通じた生活の楽しみや喜びを伝える。

 洋服をただ並べるだけでは売れなくなった中で、手作りという価値やそれに見合う価格を伝えるのも、専門店にとっての大きな仕事と意気込む。「店にセール品をたくさん置いても、たくさん客が来るわけではない。服に求めるものが激変した今、地方だから可能なコミュニティーの役割を構築し、客の生活に影響を与える存在でありたい」とする。

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「アナログ」の店内に導入した中古織機

ダブルギビングのマフラー



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