7月8日、セールスフォース・ドットコムは自社ECサイトのグロースに悩まれている事業者向けに、「OMO時代に向けて、今取り組むべきEC改革~SalesforceがTSIと提供する新たなECソリューション~」と題したウェブセミナーを実施した。
消費者の価値観やライフスタイルが大きく変化する昨今、リテールにおけるECの戦略的意義は益々向上している。今回のウェブセミナーは変革期にあるECの動向や課題に触れながら、EC先進企業であるTSIホールディングスの執行役員である渡辺啓之氏が、同社がどの様にEC事業を軌道に乗せ拡大してきたか、そして今後どの様な取り組みをしていくのかについてプレゼンした。また、EC推進の上で陥りやすい課題やその解決策について、対談形式で話したほか、今年1月にTSIホールディングス・セールスフォース・ドットコム、OSF Global Japanの間で立ち上げた、ECサイト構築・運用コンサルティングサービス「Commerce Cloudインスタントパッケージ」について、立ち上げの背景やビジョンについて紹介した。その内容についてレポートする。
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―ECと店舗を連動させる重要性と、その推進のために投資すべき分野とは
TSIホールディングスの渡辺氏は、ECと店舗を連動させる重要性について、「お客様の行動がオンライン起点になっているため、オンラインからの導線を店舗につなげる取り組みを強化しなければならない必然性に直面している」と説いた。また、ファッション小売りの市場規模がここ15年で大きく縮小していることに触れ、「ECの増収分だけでは会社全体のPLを補うには至らない。OMOをベースに店舗からオンラインにつなげる顧客接点が重要」と説いた。その推進のためには自社のEC基盤が盤石であることが重要であり、そのための投資を進めていく必要があるという。
―TSIが目指す次なるコマースの形
今から10年前の2011年、TSIのEC事業は1サイト・売上高は30億円程度だったが、2021年現在では31サイト、406億円まで拡大している。リアルの店舗数は年々戦略的に減少させており、販路の中心をECにシフトすることで利益率の高いEC化率を向上させている。
これからは、「デジタル化=ECという一収入源」という認識ではなく、「デジタル化=企業の生存戦略そのもの」であると渡辺氏は話す。そのために店舗とECが一体化したブランド体験を提供する「ユニファイドコマース戦略」に取り組んでいるという。実際に「ナノ・ユニバース」の例ではECサイト上に来店予約や試着予約、スタッフの接客予約などの機能を持たせEC起点でのリアルへの導線を創出している。渡辺氏は「OMOの目的は顧客体験の最大化であり、我々にとっては顧客こそが最大の資産。個客との関係強化を実現できる強固な自社EC基盤が必要不可欠である」と強調する。
セミナーの中盤では、岸武洋TSIデジタルビジネスDivユニファイドプラットフォーム部長、鈴木雅也TSIデジタルビジネスDivストアマネジメント部長、向山泰貴セールスフォース・ドットコムコマースクラウド営業本部本部長、別頭貴徳セールスフォース・ドットコムコマースクラウド営業本部部長代理らが登壇し、ディスカッションを行った。
―EC立ち上げから成長軌道に乗せるまでの課題や運営について
鈴木氏・岸氏は、EC立ち上げ当初を振り返り、「運用を外部依存していた際は戦略検討から実行までのスピード感が非常に遅かった」と振り返る。内製化に踏み切った背景には、PDCAサイクルの高速化と、アウトソーシングの際に発声するコミュニケーションコストの削減だという。また複数のブランド展開の秘訣や、運営時の組織体制についても語っている。
―顧客を獲得するためのアプローチに関して
「ブランドや洋服の魅力を多くの人に伝えて触れてもらうことが以外は無い」と、岸氏。「ただ、情報過多な昨今、ノイズにならないよう、パーソナライズされた顧客毎に合わせたアプローチが重要で、データドリブンなマーケティングに注力している」と語る。
―Commerce Cloudインスタントパッケージの紹介
今年の1月、TSIホールディングス、セールスフォース・ドットコムとOSF Global Japanの間で立ち上げた、ECサイト構築・運用コンサルティングサービス、「Commerce Cloudインスタントパッケージ」(CCIP)について別頭貴徳氏が特徴などについて説明した。
この枠組みではEC売上400億円を超えるTSIホールディングスの事業ノウハウや、OSF DIGITALの世界トップクラスのEC開発技術、セールスフォース・ドットコムのECソリューションを終結させ、ブランドのEC事業の立ち上げ・確立・拡大の支援を目的としている。
具体的には、TSIホールディングスはSFCCの運用マニュアルの提供や運用に関するヘルプデスクの役割、PDCAサイクルのノウハウ定着支援など導入企業の自立運営体制の構築・強化を支援する。
OSF DIGITALは、同社の「QUICK START D2C」を活用し、2カ月でECサイトを構築。早期でのECサイト構築を支援する。
セールスフォース・ドットコムが提供するSFCCは現在世界で6000サイト以上が稼働している。各種決済連携や「EinsteinAI(アインシュタインAI)」によるレコメンド機能、店舗在庫との連動など様々なOMOの取り組みを支援する機能が揃っているという。また、SaaS型ソリューションとして強固なインフラストラクチャやセキュリティも備えている。
CCIPではこれら各社の提供できる価値を組み合わせ、最大限の支援を提供することができると別頭氏は説明した。またTSIホールディングスの渡辺氏は、ECの運用業務を請け負うというスタンスではなく、EC事業者の実体験として培ったノウハウを提供しながら内製化に向けての支援を行うことで、「自社内にノウハウを貯めていく」ことの価値を強調した。
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