クリエーターブランドの知的財産権(阿賀岡恵)

2013/12/20 16:23 更新


今回は、デザインの知的財産権について。いつもよりちょっと長めです。

先日、繊研さん(新聞のほう)で知的財産権の特集がされていましたね。そしたら何の偶然か、昨日、韓国に住む一般のAYAMEファンから「韓国でAYAMEのコピー商品が販売されています!ファイトして下さい!」というメールが来ました。

いわゆる「パクり」というやつです。よくある話なのでアレですけど、今回は久々にあからさまだったので、少し立ち止まって対処しました。

対処と言っても警告レターを出す程度ですが、何もしないよりは大分マシだし、AYAMEレベルの規模では、結局このぐらいしかできる事はないのですけどね。この対処方法は、AYAMEで過去に起こった経験からたどり着いたことで、今ではその都度たんたんと対処にあたるだけなのですが、初めて起こった時は、それはそれは心乱れたものでした。

ということで、今回は以前AYAMEで起こったエピソードを交えながら、クリエーターブランドにおける知的財産権について思うことを書いてみようと思います。

このレポートは決して、パクられた腹いせとか、パクるなんて信じられない!という事を言いたいのでは無く、小規模のクリエーターブランドで起こった時に「ウチはこうしています」という参考になればと思って書きたいと思います。

まずは、今回の韓国の一件を軽くご紹介します。左がAYAMEのオリジナルで、右が韓国で見つかったコピー商品です。わりと大きいSPA型のアパレル企業だそうです。


  

 

おいおい、そのまんまやんけ(苦笑)・・・と、ここまで似ていると、これはAYAMEの商品をどこかで購入して、工場にそのまま渡して作ってもらったケースだと思います。もちろん気分は良くないですが、正直なところ、近隣のアジア諸国で起こっている事は、追いかけきれないのが現状で、それこそ追いかけたところで徒労に終わるのがオチです。

右のコピー商品は韓国で500円ぐらいで販売しており、見るからに安価のファストファッション的なもので、オリジナルとは全く違うコンセプトとターゲットなので、こういう場合は、仕方なく「捨て置く」というのが私の結論です。ま、皆さんそうされていると思います。ファイトするマネーもパワーも時間も無いし。

次に、以前に起こったコピー事件で、ワタクシが激した案件をご紹介します。当時のAYAMEでは、ここまであからさまなのは初めての事でした。

左がAYAMEのオリジナルで、右がコピー商品です。これは、私がAYAMEの取扱店様を訪問している時に偶然店頭で見つけたものです。という事は、販売しているテリトリーやターゲットが同じ市場で起こった事なのです。価格帯もほぼ同じぐらいでした。

コピー商品をわざわざ購入し、執念で編み地の目数を数え、AYAMEの生産工場の技術者さんと表糸・裏糸をひっぱり出して調べて話し合ったところ、これもどこかで商品を購入して工場にそのまま渡したケースにほぼ間違いありません。当時すでにヨーロッパで販売していたので。 



 何にそんなに腹が立ったかと言うと、同じ客層の市場で取扱店もかぶっているからなのです。しかも相手はオシャレでステキなブランドとして売り出しており、日本人からする彼ら本国のイメージもとても良いものなのに。なのに、コレです。

スカンジナビアのとある国で、ダンシング・クィーンや歴史に残る素晴らしいデザイナーを輩出した国でもありますが、一方で、安くて可愛い大型ファスト家具屋やファストファッションの代名詞企業が世界的に有名な国なので、まあ、それがベースにあるならば、彼らのマインドも納得できると言えばそうなのですが。

 この時、自分でも色々調べて勉強になったことは、デザインに対する意匠権・知的財産権に関する法律は各国まちまちなので、事がどこの国で起こったのか、によって結果が変わってくるという事です。また、アジアと欧米では知的財産に対する意識も大きく異なります。これは残念ながら皆さん薄々分かっている事ですよね。

で、この一件は日本で起こった事なので、日本の意匠法に従って判断されます。(そもそもワンシーズンに50型ぐらいリリースするので、いちいち意匠権なんて申請していないので話にならんのですが、その辺のことは脇に置いといて、)日本では「いくつ類似箇所があるか」や「初回のリリースから三年以内かどうか」で判断されていきます。

ここまで似ていて、どう見てもコピー商品なのは明らかなのにも関わらず、日本の意匠法では「これはコピー商品だ」とは立証されません。例え、意匠権を取得していたとしても、です。

もしこれがヨーロッパで起こった事ならば、話はガラッと反転します。欧州ではデザインの権利に対する意識が高く、意匠法もそれに比例しているようです。イギリスやフランスの新聞・ニュースサイトを見ていると、「パクられた!」だの「裁判中!」だの「謝罪広告!」等、頻繁に目にします。

時々、あんまり似てなくない?と思うものまで裁判しています。それだけ知的財産への意識が高いのだということが分かります。

でも、そうは言っても、諸外国ファストファッション企業のコピー天国を見ていると、しょっちゅう騒ぎ立てている割には成果が上がっていないようにも思えるので、まあファッションはそんないたちごっこの繰り返しなのでしょうけどね。

ただ、ラグジュアリーブランドをファストファッション企業がコピーするのは、企業規模で考えた時に妥当な力同士のケンカになり得るのですが、企業がクリエーターのコピーをすることは、市場への影響力から言っても、ものすごい暴力になります。

こちらがオリジナルだったとしても、例えば企業側が金にモノ言わせてさっさと意匠権を取得し、逆にクリエーターを訴えることも可能ですしね。大企業が小さなクリエーターを一息で吹き飛ばす事は簡単です。

話が絶望的になってきたところで、今回のケースの結論を言うと、ブランドの資力に差がありすぎるので、AYAMEのような小規模ブランドでは、なすすべ無し、です。悔しいけれども泣き寝入りです。

それでも一矢を報いるのであれば、という事で私のしたことと言えば、「内容証明で警告レターを直接デザイナー宛てに送った事」です。そのブランドは、創始者とデザイナーがアイコンのようにメディアに出ているブランドだったのでそうしました。

当時彼らは、ちょうど日本での知名度が定着しはじめていたところだったので、これ以上やられてはAYAMEにとってだけでなく、せっかく他のインディペンデントな靴下ブランドさん達と切磋琢磨して築いてきた小さな「クリエーター靴下ブランド」の市場も荒らされてしまうと思い、相手側のデザイナーの良心に訴える事にしました。

結果、なんの返事も来なかったけれども(そりゃそうだ)、その後は、この写真以外にも見つかっていた類似商品の再生産はしていないようです。なので、少しは効いたかな、と思っています。

長々と書いてしまいましたが、結局ウチのような弱小クリエーターブランドができる事と言えば、購入してくれた人が手に取った瞬間に「あ、これは本物だ」と、心に伝わる品質を保つことです。所詮はコピー商品、色や柄は簡単にコピーできたとしても、クオリティやものづくりの魂までは真似できないでしょう。

あとは、可能ならば、許せない事は相手に伝えればいいと思います。海外の企業だろうが関係ありません。なので、最後に、参考までに私が書いたつたない英文警告レターをご紹介します。英語が書けないから・・・と、泣き寝入りしているクリエーターさんがテンプレートにでもして下されば幸いです。

最後の方は、テメェコノヤロウ的な説教になってきているので、今読み返すと、ヤダ私ったら怒っちゃってるテヘペロ!と、気恥ずかしくなってしまうのですが、今では笑い話です。マネされるってことは、それだけ注目されてるって事で!!前向きな考えも残してこのレポート終了といたします!!

それでは皆様、ごあいさつにはちょっと早いけど、ハッピークリスマス&ニューイヤー!!


 




気鋭の靴下ブランドAyame’の活動記録。現在年2回、東京、パリ、ニューヨーク、ロンドンにてコレクションを発表、Made in Japanの靴下を世界に発信中 あがおか・あや/Ayame’socksデザイナー/桑沢デザイン研究所卒/2007年Ayame’設立



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