【トップインタビュー】瀧定名古屋 瀧昌之代表取締役社長

2018/07/03 05:45 更新




 激変する国内外のファッション市場から求められるテキスタイルや、製品を供給していくためには自らが絶えず「新陳代謝」を図り、これまでよりも高い企画力と調達力を発揮していく必要があります。

 レディスのファッションを語り、企画していくには女性の力が不可欠と考え、時間をかけて女性の営業担当を育ててきました。これにより男性社員は、意識や行動の変革を迫られ、全社員がより主体的に仕事を取り組む流れとなって業績がプラスになりました。また、健康の維持や向上にもつながり、新たな提案や新規販路の開拓に力を振り向けられるようになっています。

 川上のモノ作りに関しては、素材開発部門が手掛けている「ハウス・オブ・プロダクション」(自家製造)で、原料からオリジナルの糸やテキスタイルを提案し、ウールなどの天然素材から合繊素材まで取り組んでいます。当社としては、「履歴管理」を保証した安心できるオリジナル素材や製品を顧客へ販売していきます。

 AI(人工知能)の発展が目覚しいですが、人間のひらめきや判断の重要さはなくならないでしょう。情報収集ではAIなどを活用し、ファッション業界の新たな動きや起業にも積極的にアプローチし、必要に応じてファイナンスを付け、次の時代の担い手とともに成長していけるよう努めていきます。

代表取締役社長 瀧 昌之氏

各部門のキーパーソンに聞く

◆専務取締役製品部長 岩田  政治氏


世の中の目まぐるしい変化によって、私たちファッション業界のあらゆる仕事が一気に変わろうとしています。過去の成功体験は、そのままでは今の時代に通用しません。

 製品部門は多くの人の手を介する分、今の変化に対応できる仕組みをいかに再構築するかが大きなポイントになります。同時に日本だけでなく、グローバルにその仕組みを作る必要があり、その点で人材の育成こそがカギとなっています。デザイナーやパタンナー、生産管理、営業、貿易、事務、マネジメントする管理職のそれぞれがより高い専門性を身に付け、グローバルな拠点とも連携できる能力が求められていると考えます。

 激変する店頭の要望に応えるには、ディマンドチェーンとサプライチェーンを融合することが不可欠でしょう。まだできているわけではありませんが、それこそが差別化になるはずです。

 人材と組織が管理職から末端まで、そしてインフラに至るまで十分にコミュニケートし、時間の使い方や役割分担のあり方を変えていかなければなりません。話題のAIについても管理や生産性の追求では必要ですが、ファッションは人間の感性や判断が原点ですから、使い方を間違うことなく導入したいと考えています。



◆常務取締役紳士服地部長 住田  智勝氏


 メンズの素材を扱う当部署はウールが中心でしたが、新しいことに意識を高く持ってチャレンジすることが重要になっています。これまでの強みを生かしたオフィスユニフォーム分野の開拓もその一つですが、ベトナム法人の活用や素材産地の拡大を進めています。素材としての機動性を生かした輸出では、中国やその他の地域への販売を広げる方針です。カジュアル市場への拡大についても強化し、製品との連携やこれまでと違う産地の開拓を手掛けています。

 昨年度から婦人服地との合同展示会も開いており、販売先の相互乗り入れや、新しい芽を作る取り組みで成果を挙げています。合同展は今年度も引き続き継続していきます。

 人材の育成については重要な課題です。生地に関してスタッフの研修にはこれまで以上に力を入れるのと並行し、中国の上海法人スタッフの教育も進めています。現地販売スタッフを瀧定名古屋で預かり、日本で約3カ月間の研修期間を設け、物作りの流れを身に付けさせ、販売力の強化につなげています。また、今期から上海法人では、婦人服地と紳士服地の部署が一体化した組織となり、新体制になったのを良い機会とし、スタッフが自律的に営業できるよう、気配りや勘所を教育しています。



◆取締役紳士服部長 大西  修造氏


時代の変化に対応するのを最重要課題としながら、紳士服部門の不変のテーマとして「安定供給」と「提案力」を掲げています。「安定供給」とは品質の安定、確かな納期、競争力のある価格であり、そこから生まれるものは顧客にとって安心感に他なりません。「提案力」とは、当社が持つ豊富なソースを使い、価値あるものを自由自在に組み立てて提供することへの期待感です。

 これまでは郊外型専門店や百貨店が大きな市場でしたが、一昨年からはセレクト系にも拡大しています。そのために展示会の場所や内容をそれに相応しいものに変えてきました。5月に開催した19年春夏展では4回目となり、徐々に成果が表れてきています。同時に営業と生産の連動、若手の育成にも注力しています。また、昨年2月に発足した「戦略支援室」が、部内で横断的に動いて商品企画や販売などのサポートを行なっています。さらに今年は、カンボジアの自家工場を強みとして発揮できるように取り組んでいきます。

 AIは導入の次元ではありませんが、データ収集や営業生産の補完で活用できればと考えています。むしろ今やるべきことは、アンテナをしっかり張り、異業種の参入には敏感に反応できるよう、背景や仕組みを整えておくことだと考えています。



◆取締役婦人服地部長 瀧  浩之氏


 時代の変化という点では、百貨店アパレルの構造改革の影響を最も受けた部門でした。そこで取り組んだのが海外への販路拡大と新しい取引先の開拓です。数年間の活動を経て、ようやくセレクト系を販売上位にすることができました。その点で昨年度は着実な変革の成果が出た年でした。海外の現地法人や国際貿易推進部との連携で、海外比率は10%まで広がりました。次の課題は小売りへのアプローチです。

 原料素材部とも連携しながら、原料の段階からワークし、オリジナルの糸で独自のファブリックに仕上げ、付加価値の提供に力を入れています。

 これらの課題に取り組む上で、人作りを重視しています。設計や意匠ができる人材を育成しています。女性の力の活用もようやく緒に就きました。七つの課すべてに女性が在籍していますが、さらに増員を目指します。女性だけのチームによる取り組みも始まったところです。まだ部門としてアプローチが不十分な新進デザイナーへの提案も強めていきます。

 業務を効率化するため、事務的な部分についてインフラ整備を行なってきました。また、当社の持つ幅広い情報力は、他社に比べ優位と自負していますが、現状、各部署に留まっています。それを活かして対応力を発揮できる情報インフラ整備が今後の課題です。


瀧定名古屋株式会社

〒460-8667 名古屋市中区錦2丁目13番19号

【URL】http://www.takisada-nagoya.jp/

(繊研新聞本紙7月2日付け)




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