京王百貨店は、来月より始動する2018年度からの中期3カ年計画で、「利益指向経営」に向けた収益力の向上に重点を置く。前中計で「客層の拡大」「販路の拡大」を推進してきたが、成長の芽を新中計でさらに大きく育てる。2020年代に利益の実を刈り取るために競争力の強化とコスト構造の改革をさらに推進し、中長期にわたって安定的に利益を確保できる経営基盤を確立する。
新宿店中地階の食品フロア改装は11年ぶり
基幹店である新宿店は集客力の強化と客層の拡大に向けた取り組みを継続します。改装のテーマは他店にない独自性と、欠落しているMD、サービスを補完する標準化です。
顧客ニーズが顕在化している食品はその一つです。前中期の地下1階の改装に続き、中地階の食品フロア(菓子・総菜売り場)は18年春から秋にかけて改装を実施します。第一弾として菓子売り場を3月8日オープンしました。30~50代の働く女性のデイリー需要を取り込むために生菓子の強化、手土産などカジュアル化するギフトに適した話題性の高い専門店を入れました。総菜売り場は秋にオープンする予定です。
積極的な売り場改装で競争力強化と増収へ
1階はイベントスペースを移設・拡充するとともに、化粧品をさらに拡大します。2~4階の婦人服は各階の対象顧客を明確にして、雑貨など非アパレル領域を増やして衣料品との買い回りにつなげます。6階は宝飾・時計の強化による上質化とともに生活雑貨の拡充を図り、8階は健康と美、看護・介護といった切り口で独自性を磨きます。
売り場改装によって競争力強化ならびに売上高の拡大を図る一方、コスト構造の改革も推進します。販売コストの見直しとともに、プロパーをきちんと売り切る意識を徹底することで、原点である企画力、運営力の向上や利益改善につなげます。合わせて、自主、ショップ、テナントなど売り場分類ごとに業務を整理し、要員配置の適正化、効率的な業務フローの確立に取り組みます。
インバウンド対応を強化
16年12月に「ロレックス」の大型店を1階に導入したほか、ここ1~2年に化粧品などを拡大した効果で、インバウンド(訪日外国人)の取り込みに成果があがっています。17年度の免税売上高は前年に比べて2倍となり、全館売上高に占める割合は10%を超えました。
さらに需要を掘り起こすために、中国系のモバイル決済サービス「アリペイ」のPOS(販売時点情報管理)対応で利便性を高めます。また、専用カードの発行でリピート顧客の獲得に結び付けます。
郊外店で増収に転じた聖蹟桜ヶ丘店
聖蹟桜ヶ丘店は17年度、増収基調であり厳しい状況が続く郊外商圏にあって健闘しています。食品の改装の効果をはじめ、様々なイベントを実施して集客増に結び付いています。SC全体で販促策に取り組んだことが、館全体の集客に大きく寄与しています。
新中期では営業利益の安定的な確保に向け、SCとの一体運営モデルの確立に向けた基盤整備を推進します。百貨店が強みとする食品や子供用品売り場を強化するとともに、簡素化できる部分は見直し効率的な店舗運営をさらに徹底していきます。
外商や関連事業でトップライン押し上げ
外商部門は20年度の外商カード刷新を見据えた顧客アプローチを再構築します。店舗との連携をはじめ、上位買い上げ顧客、重点エリアへの要員を厚くして選択と集中を強めます。
関連事業はEC、サテライト、アパレルの三つが柱となります。ECは店舗および子会社化したEC専業のセレクチュアーとの連携強化で、売り上げの拡大を目指します。サテライトは新宿店やECとの連携による扱い商品やサービス機能を拡大して顧客接点の拡大に力を入れます。アパレルは婦人服「ミ・デゥー」の継続的出店と、さらに第2ブランドの導入を検討していきます。
混沌とする流通業の未来を切り開く
私たちを取り巻く環境はITの進化により加速度的に変化しています。しかし、利便性が高まれば高まるほど、逆にリアル店舗の価値が見直される部分もあると考えています。
流通業の未来予想図が混沌とする中、過去に固執することなく次々と登場する変化をうまく取り込みながら新しい百貨店ビジネスモデルを確立していく。そうしたしなやかな発想と行動力が京王百貨店の将来を形作るという強い意志をもって、計画達成に邁進していきます。