22年春夏ニューヨーク・コレクションは、ボディーへの意識を感じさせるコレクションが相次いだ。ビュスティエのようなウエストパーツのディテールやトロンプルイユのボディープリントをドレスに取り入れる。その一方で、スポーティーで軽快なアイテムをきらびやかでラグジュアリーに仕立てたスタイルも登場している。
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〈フィジカル〉
トム・フォードは、リンカーンセンターでショーを行った。ショーの前は、テラスでカクテルタイム。久しぶりの優雅なシャンパンタイムを楽しんだ後、隣接する屋内スペースでショーが行われた。登場したのは、スパンコールとサテンがキラキラきらめく単品コーディネート。ターコイズブルー、フクシャピンク、バイオレット、コッパー、黄緑とカラーパレットも弾ける。「さあ、パーティーに行くよ」とうずうず、わくわくの熱量が伝わってくるコレクションだ。
ドレスアップの仕方が変わったと主張したショーでもある。ドレスではなく単品コーディネート、しかもレーサーバックのタンクトップ、リブ編みつきジャケット、サイドにラインを走らせたトラックパンツなど、スポーツアイテムをドレッシーな素材で仕立てているのだ。レーサーバックのタンクトップとコルセットをドッキングしたようなアイテムもある。おしゃれして出かけたい、でも着やすい服がいいという、今の時代の気分を実にうまくキャッチして表現した。アクセサリーは、キラキラ光るクリスタルを散りばめたヘアクリップ。メンズは、シルバーのメタリックレザーのブルゾンを入れた全身シルバーのコーディネート、ゴールドラメニットのシャツと同系色のヒョウ柄パンツなどを見せた。
アルトゥザッラのショー会場には、風呂敷包みと水のボトルが各席に置かれていた。一瞬「お弁当?」と思ったが、中を開けてみると、出てきたのは1冊の本。ところどころにスワッチやスケッチが挟み込まれている。インスピレーションをここから得たということを示したのだろうが、こんな手の込んだことをわざわざしたのかと感嘆した。それはコレクションにも反映されていた。タイダイ、クロシェ、タッセル、ニードルワーク、パールでトリミングした裾など手仕事がいっぱい。ニットの端を結んだり、ひもを巻き付けたりしたディテールも多く、結ぶテクニックが多いから風呂敷包みにしたのかとも思う。シルエットはロング・アンド・リーンで、ミドリフトップとスカートの合わせが多い。
(ニューヨーク=杉本佳子通信員)
〈デジタル〉
トム・ブラウンは、家をかたどったオブジェを置いた空間でのショー映像を配信した。トム・ブラウンらしいテーラードを軸にしたレイヤードスタイルが登場する一方で、Iラインのストレートドレスが充実した。ストレートドレスにのせられるのはトロンプルイユのプリント。筋骨たくましい男性の裸や布のドレープをストレートドレスに影絵のようにプリントする。そのドレスを着るのは、女性モデルだけではなく男性モデルもいる。ドレスに男性のボディーをプリントしてジェンダーフリーのモデルが着るという演出は、どこかシュールな雰囲気。アシンメトリーの袖付けとなったドレスは、彫刻のようにも受け取れる。そのフォルムからは、ボディーへの意識も感じとることができるが、アイデアとプロダクトとしての完成度から見て安易な発想に受け取れた。
トリー・バーチは、石畳とマーケットのような空間を舞台にしたショー映像を配信した。春夏は軽やかなデイリースタイル。デザインのポイントとなるのはウエストで、ボーンを入れたようなパーツやリブニットのようなパーツを切り替えて、ウエストにアクセントを作る。チェックのスカートとウエストパーツを切り替えてドレスに。チェックのドレスも、胸元からウエストにかけて違う生地で切り替えてアクセントにする。パンツルックもまるで腹巻を巻いたようなトップと組み合わせる。ビュスティエのようなパーツのディテールは、構築性を生み出すとともに、軽やかな動きのアクセントとなる。リアルなスタイルにフェティッシュなニュアンスを加えて彩りを添えた。
(小笠原拓郎)
〈フィジカル〉
フー・ディサイズ・ウォーは、イントレピッド海上航空宇宙博物館の屋上でランウェーショーを行った。戦闘機が並ぶ中、ステッチで描いた細かい線描画の中にコミカルな表情のスカルを入れたデニムのコートやパンツが登場する。得意とする激しいダメージ加工のジーンズは健在だが、ステンドグラスのようなきれいな色のパッチ、クリーンなデニムをパッチワークしたセットアップ、生成り地にレインボーカラーでスカルなどをステッチしたコートなど、きれいめなアイテムの幅を広げた。
デザインディレクターのエヴァラード・ベストは、雑誌とPR会社のインターン、服のブランドの立ち上げを経て、19年にパリでフー・ディサイズ・ウォーをローンチした。パリで2シーズン見せ、今回はニューヨークで発表。19年にオフホワイトでヴァージル・アブローとデニムパンツを共同制作した。
(杉本佳子通信員)