22~23年秋冬ニューヨーク・コレクションは、スカート丈のバリエーションが豊富に広がった。超ミニが多いが、その一方でフロアレングスも目立つ。テクニックはプリーツが浮上し、特にサンバーストプリーツが目立つ。
(ニューヨーク=杉本佳子通信員)
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アルトゥザッラは、本社が入居するウールワースビルのロビーでショーを行った。各席に前回同様、スワッチをところどころにクリップで留めた分厚い本が風呂敷に包まれて置かれている。アメリカ人小説家、ハーマン・メルヴィルが捕鯨船に乗船した体験を元に書いた小説『白鯨』(1851年)だ。ジョセフ・アルトゥザッラは現実と神話、事実とファンタジーの間にあるスペースを探求したという。その結果、勇敢な船乗りと神秘的で暗い海に住む人魚や架空の生き物のイメージを服に投影した。
コレクションでは、勇敢な船乗りは、「堂々と闊歩(かっぽ)する自立した強い女性」に置き換えられたと感じる。冒頭に登場したのは、蹴回しの長いフロアレングススカートとロング丈のトレンチコート。量感で存在感を出すが、落ち着いた中間色が洗練された都会的なルックに見せる。フロアレングススカートはキーアイテムの一つで、フロアレングスドレスもある。波打つサンバーストプリーツが、流れるようなラインを描く。アウターはピーコート、ユーティリティージャケット、ライダーズジャケットと、ハードなイメージ。フィッシャーマンセーターを長くしたようなドレスは部分的に穴を開け、着古した感じを出す。柄は、モロッコのじゅうたんに見られる幾何学模様と、日本の職人と協業した絞り染め。アルミニウムを小さなコイン状にカットして手で変色させたパーツを随所に加え、最後はうろこのようにスパンコールをずらしながら重ねたドレスで締めくくった。
コーチの会場には、ほこりをかぶったアメ車のステーションワゴンがぽつんと置かれている。薄暗い照明はそのままに、モデルが大きな犬を連れて横切ったかと思うと、ステーションワゴンから出てきたモデルが後ろのトランクから荷物を取り出して古びた家に入っていく。自転車に乗った男の集団が走り抜ける。アメリカの地方の日常風景だ。
懐かしいカーペンターズの歌とともに登場したのは、シアリングのコートとストリートファッションをミックスしながら70年代の要素を散りばめたコレクション。オーバーサイズのヘビーなシアリングのコートは、肩をドロップさせて羽織る。ブラジャーとだぼっとしたコーデュロイのパンツが、フリースピリットと抜け感を加える。シアリングのスカートに合わせるのは、モノグラムにグラフィックプリントをのせたTシャツ。その後は、白のフラットカラーと胸元から流したプリーツがガーリーなミニドレスが並ぶ。白いレースの襟や白い透かし編みのミニドレスも登場した。首にはドッグカラーを巻き、ロックな気分をプラス。途中、パステルカラーの花柄のコートや千鳥格子のスカートをまとった男性モデルも登場し、ジェンダーフルイドの要素も入れた。ポップなライムグリーン、ラベンダー、オレンジが並ぶが、そこから黒のレザーに黒のグラフィックTシャツを合わせたロックスタイルへ続く。グラフィティーを大胆にペイントしたシアリングとレザーのコートで締めくくった。
アクンヴァスは、初めてモデルを使ってウィメンズとメンズのプレゼンテーションを行った。今シーズンもグリーン、イエロー、ラベンダー、オレンジの美しいカラーパレットが目を引く。特に秀逸なのはニット。ただ見せ方があまりうまくなく、服がもったいない。前シーズンは、サクスフィフスアベニューとノードストロームが買い付けた。
20周年を迎えたアリス・アンド・オリビアはブルックリン在住の詩人、マホガニー・L・ブラウンと協業し、ブラウンが自作の詩「ザ・ソング・オブ・シー」(彼女の歌)をラップ調で歌い、コレクションを着たダンサーがエネルギッシュに踊る動画を配信した。振り付けはビヨンセの「シングルレディース」の振付師、エボニー・ウイリアムズ。服はウエストシェイプのジャケット、シルエットのきれいなパンツ、コルセットをアレンジしたアイテムなど、テーラーリングの要素が強い。そこに鮮やかな赤、ライム、ターコイズブルーを入れて、パワフルでタフなイメージを強調する。大きな柄に黒とライムを配したスカーフプリントのロングカーディガンとパンツ、スパンコールで描いたレパード柄の超ミニスカートも迫力いっぱいだ。
イミテーション・オブ・クライストは、メタバース(インターネット上の仮想空間)で発表した。山火事の火の粉が舞う中、フューチャーリスティックでスポーティーなアイテムとドラマチックなボリュームのドレスを見せた。NFT(非代替性トークン)デジタルアートとして3月28日に発売する。小さい時からサイエンスフィクションが大好きで新しもの好きな、デザイナーのタラ・サブコフならではの動きだ。
タダシ・ショージは、動画配信で47体を見せた。テーラード襟のドレス、襟回りや袖にふんわりしたボリュームをもたせたドレスやパンツスーツなど、今シーズンのトレンドをタダシ流に取り入れる。固定観念にとらわれないことがテーマで、メンズジャケットのようなミニドレスはグラフィカルなヘリンボーン柄。マニッシュだがポップなニュアンスもある。