21~22年秋冬パリ・コレクション アフリカや東欧の若手に存在感

2021/03/16 06:27 更新


 21~22年秋冬パリ・コレクションは、アフリカやロシア、東欧、中東といった国々の次代を担うデザイナーが多く参加した。「バレンシアガ」や「メゾン・マルジェラ」といった常連の有力ブランドの参加が少なかった分、若手が発信する好機になったとも言える。ベーシックとクチュールのミックススタイルや、きれいなカラーパレットのストリートを背景にしたスタイルが広がっている。

(小笠原拓郎、青木規子)

【関連作業】21~22年秋冬パリ・コレクション 艶やかな黒とまばゆい白で見せる

 モッシは、マリ共和国出身の両親を持つフランスのデザイナー。秋冬は、学校を思わせる大きな建物で、躍動感のあるベーシックスタイルを見せた。シンプルなシャツやシャツドレスといった定番アイテムに人の手による動きをプラスしている。身頃をざっくりとしたギャザーが包み込むシャツは、中心でぎゅっと結んだ布が大きく揺れる。白シャツは、クチュールのように細かくギャザーを寄せたふんわりチュールで包み込む。セットアップやレギンスのいびつな水玉は、ペンキで手書きしたようなタッチが楽しい。20年のアンダムでは、ピエールベルジェプライズを受賞している。

モッシ

 ナイジェリアを拠点にするケネス・イズが撮影場所に選んだのは、現地の生活感あふれる屋外。色とりどりの布をバックに、アフリカンな民族柄のルックを見せた。土っぽくなりがちなテイストだが、都会のストリートや洗練されたモードを感じさせる点が注目デザイナーたる理由。シャツに組み合わせたプルオーバーには、植物が絡み合う版画のような柄が大胆に描かれている。伝統を感じさせるエッセンスと、スケーター風の程良いルーズシルエットが重なり合う。オレンジの背景に、ブラウンのシャツとターコイズブルーのネックレスといった色のコントラストから根底に流れるアフリカンスピリットを感じる。アイコンのマルチストライプのジャージードレスは、ウエストのスラッシュ、裾のスリットでヘルシーに肌見せ。

ケネス・イズ

 WOSの新作の艶やかなペールカラーは、真っ白な雪山によく映える。アイスブルーのサテンで仕立てたセットアップに、光沢のあるパープルのフェイクファーコート。発色も質感も温かい感じとは真逆を行く。白いボディースーツとハンカチーフヘムの白いエアリードレスも重ね着とはいえ、防寒の要素ゼロ。冷たい感じを際立たせて、発色の美しさに焦点を当てている。ストリートタッチのスタイルを、ギャザーやドレープで上品に演出。頭をすっぽりくるむモヘヤのマフラーと、雪の結晶のような装飾のコントラストも美しい。デザイナーはモスクワ出身のアンドレ・アルチョーモフ。ロシア発のストリートスタイルがぐっと洗練されてきた。

WOS

 ウクライナ・キエフ発のアントン・ベリンスキーの映像は、流氷が流れつく浜辺が舞台。こちらも凍(い)てつく空気感の中、コレクションを披露した。シャツとハイウエストパンツに、体をすっぽり包むポンチョやジャケット、手編みのニットドレス。テーラーリングやニットを軸にしたスタイルは、赤茶の大地、白い氷、アイスブルーの空を思わせるカラーパレットで染められている。群衆を撮影したプリントや動物柄など、自然の風景になじむコレクションだ。

アントン・ベリンスキー

 ドバイ発のクリスティーナ・フィデルスカヤは、洗練されたラウンジウェアやクチュールタッチのドレスを日常着に落とし込む。柔らかな質感のフーディーやラッフルブラウスに、トラックパンツやガウン感覚のロングコート。クリームやブラウンのワンカラーで、スマートなリラックススタイルを完成させる。チュールのイブニングドレスにはスニーカー。トレンドの王道を行く。

クリスティーナ・フィデルスカヤ

ビッグトレンドは黒

 21~22年秋冬パリ・コレクションは、黒がビッグトレンドになっている。強くてシャープな黒だけでなく、柔らかくて繊細な黒、ブラック・アンド・ホワイトの優しいモノトーン、コントラストがポイントになっている。

 スキャパレリは、シューティング風景を動画配信した。ダニエル・ローズベリーによるコレクションは引き続き、ブランドのDNAともいえるシュルレアリスムのモチーフを随所にちりばめた。構築的なコートドレスやツイードジャケットの胸元を飾るのは、女性のバストを精巧にかたどったパーツ。目をくぎ付けにするディテールは、当時はアバンギャルドなデザインだったが、シュルレアリスムはすでにクラシカルな存在でもあり、アーティーなブローチを飾っているぐらいの感覚でデザインをとらえることができる。鼻や耳の形のボタンもカジュアルアイテムと組み合わせて気軽に着る。アートを日常に取り入れている感じだ。ボディーコンシャスなデニムのコンビネゾンやオーバーサイズのデニムのセットアップが華やかに彩られた。顔の一部を象ったネックレスチャームもアクセント。

スキャパレリ

 タカヒロミヤシタザソロイストは、パリ・レディスコレクションに初めて、参加した。ろうそくの光、ガラス瓶が割れ、再生される映像、瞳のクローズアップ、そこに差し込まれる黒と白の服。そんなミステリアスな雰囲気の映像を配信した。黒と白だけの服は大きなベレー帽に安全ピン、たくさんのファスナーを配したセットアップ、体を拘束するかのようなベルトとバックルのディテールなどが特徴。

タカヒロミヤシタザソロイスト

アン・ドゥムルメステール

 伊セレクトショップのアントニオーリに親会社が変わった今回、原点ともいえるモノクロのパンキッシュな女性像に焦点を当てた。歌手のパティ・スミスを連想させるクールで繊細な女性像。カシュクールシャツには細いひもが垂れ下がり、タンクトップだけのきゃしゃな体にパフ袖を組み合わせる。改めてブランドイメージを際立たせた。

アン・ドゥムルメステール

アクリス

 雪が積もる公園の遊歩道を、散歩するようにモデルが歩く。フーディーやマフラーにベルテッドコートやファーブルゾン。温かなスタイルにニット帽も欠かせない。働く女性といったイメージが強かったブランドが、日常に寄り添うスタイルを発信した。創業の地、スイスのサンガレンへのオマージュを込めて、シグネチャー素材のレースが随所に飾られた。

アクリス

アニエスベー

 白いショールームで見せたのは、モノトーンスタイル。ジグザグ柄のセーターやギャザースカートなどフェミニンなブラック・アンド・ホワイトを提案した。黒いニットドレスに赤いリボン、ネオンカラーの柄の裏地など、色のコントラストも目を引く。ポップなカラーパレットの60年代調スタイル、タータンチェックを組み合わせたビンテージ風も出ている。

アニエスベー


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