21~22年秋冬パリ・コレクション 無機質な空間で服を際立たせる

2021/03/05 06:27 更新


 21~22年秋冬パリ・コレクションは、他都市と同様にほぼデジタル配信となる。そんな中、ワタルトミナガやタカヒロミヤシタザソロイストなどの日本ブランドが初めて、パリ・レディスコレクションのスケジュールに加わった。デジタル化が一気に進んだ前シーズンは自然回帰をテーマにしたブランドが多かったが、今回は対照的に無機質な空間で服を際立たせる表現が目立っている。

(小笠原拓郎、青木規子)

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 マリーン・セルのコレクション発表に先立ち、自宅に限定1500冊の本が届いた。そこには秋冬コレクションの背景にある素材や製作過程がつづられている。「CORE」と題されたコレクションは、エコフューチャーリズムがキーワード。再生されたスタイルとリサイクル繊維を使ったコレクションだという。シルクスカーフやレザー、デニム、タータンチェックスカーフ、ハウスホールドリネン、カーペット。様々な生地を再生して新たなアイテムへと作り上げる。シルクスカーフはパッチワークされコートやフルイドスカートに、タータンチェックスカーフもバイアスにはぎ合わせてチューブトップやタブリエへと変わる。カーペットもつなぎ合わせてタイトスカートやベストになる。リサイクル素材のアイテムをまとめるのは、マリーン・セルのシグネチャーともいえる三日月柄のボディースーツ。得意のモアレ地を使ったスポーティーなアイテムも充実した。家族のぬくもりを感じさせるキャスティングで、新しい時代のファッションの在り方を強調した。

マリーン・セル

 前シーズン、パリの公園を使ってフィジカルのファッションショーを開いたコシェも秋冬はデジタル映像での発表となった。これまでかたくなにストリートのリアルにこだわってきただけに、デジタル映像で服のクオリティーを伝えるのは難しい。映像はルックが瞬間的に変わっていき、少年が未来を象徴する光を見つめるというもの。秋冬は再生への思いを込めて、「フェニックス・コレクション」と名づけられた。デニムやコットン、ベルベットにフリース、ジャージーやビーガンレザーをミックスしたスタイルが揃う。より繊細で、よりサステイナブル(持続可能)なコレクションでありながら、セクシーでシャープであることを目指した。ミドリフ丈のジャージートップや胸元をカットアウトしたコンビネゾンなど、コシェらしいストリートのエレガンスを意識したラインが充実した。

コシェ

 セシリー・バンセンといえば、ギャザーに包まれた優しい服というイメージがある。ただ、単純なフェミニン服ではなく、うちに秘めた芯の強さが軸になってブランドの空気を作り出している。今シーズンの映像からは、そんなセシリーの二面性が伝わってくる。ウェアはいつも通り、ふんわり柔らかい。ケーブル編みのタートルネックセーターに、キルティングのギャザードレスやハイウエストから丸く膨らむバルーンスカート。インナーの透けるセーターは、肩の付け根のカットワークが細かくギャザリングされている。繊細なイメージとは対照的に、映像の舞台は無骨だ。がらんとした無機質なオフィスビルで、モデルたちはにこりともしない。空間と表情が相まって、甘いイメージをかき消している。白やクリーム、ペールイエロー、ペールピンク。淡い色のふわふわドレスに組み合わせた黒いローファーのせいか、どことなく生真面目な感じも魅力的だ。

セシリー・バンセン

 久々に日本の若手がパリのオンスケジュールにデビューした。富永航によるワタルトミナガは、鮮やかな色柄で弾けるイメージを表現してきた。初のパリでも、そのスタイルを強く発信した。冒頭、カラフルな部屋着風の上下を着た若い男女が、笑顔で撮影に挑んでいる。その絵はスーパーのカタログを思わせる、なんとなくダサくてポップな感じ。そのナードな雰囲気を、本気で遊んでいるのが伝わってくる。バイカーの絵が描かれたスウェット風のプルオーバーは、よく見ると細かいインターシャニット。陰影まで繊細に描かれている。プリント風の刺繍、ポロシャツ風の手編みセーターなど、どれも手が込んでいる。愛着が感じられる服作りだ。富永は、16年にイエール国際フェスティバルでグランプリを受賞。21年春夏はニューヨーク・コレクションに初参加した。

ワタルトミナガ

 ダウェイは、体育館を舞台にきれいなカラーリングの量感スタイルを見せた。淡いブルーやパープル、ピンクを基調にしたフェミニンなイメージだ。小花柄のジャケットとミドルゲージのジレを重ね、マフラーをもこもこと巻く。スカートはハンカチーフヘムのフレア、ベルテットコートはエアリーなラインを描く。布の動きを何層にも重ねて楽しいスタイルに仕上げていく。

ダウェイ


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