21~22年秋冬ミラノ・コレクションは、無観客のランウェー形式でデジタル配信するブランドが目立った。前シーズンはストーリー仕立てのショートムービーやデジタルを駆使した配信などバリエーションが広がったが、改めて服の動きが伝わるランウェーショー形式が見直されたようだ。トレンドとして浮上しているのは、グラマラスやフューチャーリスティック。リトルブラックドレスがキーアイテムになっている。
(小笠原拓郎、青木規子)
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ヴァレンティノは前シーズンに続いてミラノをコレクション発表の場に選んだ。舞台となったのはミラノ市内のピッコロテアトロ。「青い囁(ささや)き」(ナッシング・コンペアーズ・トゥー・ユー)の生演奏とともに、モデルたちが舞台へ登場する。
秋冬は黒と白のストイックな世界。光と影の中でミニマルな中に気品をたたえたスタイルを見せた。黒いケープに白いシャツ、シャツの襟は大きくとがり、丸みを帯びたケープとコントラストを描く。バイカラーのダイヤ柄やウィンドーペーンをのせたケープやコート、黒いセーターにもグラフィカルなスラッシュのような切れ込みが入れられる。エリザベスカラーの白いブラウスは、黒いプルオーバーを重ねて禁欲的なイメージ。たくさんのショートパンツやミニスカートが黒と白のミニマルなラインに軽やかさを加えていく。一方、メンズはゆったりしたストレートパンツのクロップト丈。ハードなブーツがそのスタイルを完成へと導く。黒と白の中に一瞬だけ、きらめきを与えるのはゴールドの膨れジャカードのスカートやゴールドの箔(はく)のジャケット。
もちろん、ヴァレンティノらしいハンドクラフトを感じさせるアイテムも揃う。フェザー刺繍のケーブルニットはふわふわとした羽根の動きがエレガント、ゆったりしたコートはフィッシュネットのような透け感のあるインナーと合わせてグラマラスな雰囲気を強調する。重々しくなりそうな黒と白に、カットワークやスラッシュ、レースといった透けるピースを取り入れることで今のバランスを探っている。それは抑制と開放、快適性とエレガンスの間の物語。
MSGMは鮮やかな色を強調したコレクションを見せた。その映像は、またしても動画を逆再生したもの。モデルたちが、劇場を後ろ向きに歩き、フィッティングルームでは服を脱いでいくという映像だ。最終的には劇場の座席にモデルたちが後ろ向きに歩き着席するという設定。ただ、その逆回しの映像が服とリンクしているかというと、それは感じられない。その意図は不明だが、単純なショー形式とは違う見せ方がしたかったということなのであろうか。秋冬はグリーンやイエロー、ピンクやブルーなどの鮮やかな色の組み合わせ。そこにパテントの光沢やフェイクファーの毛足が重なり合う。色を強調しながらも、リアルストリートスタイルが充実した。
フィロソフィー・ディ・ロレンツォ・セラフィニは、秋冬もガーリーなムードがいっぱい。スクールガールのユニフォームを背景にしたコレクションとなった。エンブレムをアップリケしたセーター、レタードアップリケのブルゾン、スクールストライプのプリーツスカート、チルデンセーターやスタジアムジャンパーの変形デザインが充実した。紋章モチーフのジャカードセーターも面白い。ビッグショルダーのトップの一方で、ボトムはレギンスやミニスカートで軽快に仕上げた。
サルヴァトーレフェラガモのテーマは「フューチャーポジティブ」。グラフィカルなカッティングと明るくクリーンな色のルックが揃った。映像の舞台は筒状の光のトンネルと未来都市。そこに直線を強調したセットアップやドレスが登場する。セットアップはノースリーブトップやテーラードジャケットとワイドパンツ。ピンクやブルー、グリーンのワンカラーやトーン・オン・トーンに、幾何学的な切り替えのブーツやスニーカーを組み合わせる。モータースポーツのウェアのように細かく切り替えたキルティングのタイトドレスも未来的だ。直線が際立つなか、シフォンのロングスカートやカットジャカードの糸が優雅な動きをプラスする。映画「ガタカ」や「マトリックス」など未来を描いたSF映画をインスピレーションにした。
ブルマリンは、いつも以上に若々しく陽気で挑発的。2000年代のブリトニー・スピアーズやパリス・ヒルトンといったポップグラマーから着想した。映像の冒頭は、ビジューを飾ったバービー人形の部屋のようなピンクの空間。そこに集ったモデルたちは、チョウとともに歩き出す。身にまとうのは、露出度の高いミニ丈のキャミソールドレスやブラトップ、ミニスカート。ニーハイブーツを履いてずんずん歩く生意気な少女のイメージと、艶やかな大人の女性のムードが重なる。ロマンティックなピンクやブルーのバラ柄、ぼんやりとした抽象柄で鮮やかに彩っていく。ピンク、イエロー、サックスブルー。パステルカラーのフープイヤリングもキーアイテムだ。クリエイティブディレクターのニコラ・ブロニャーノが描いたのは00年初頭のファッション。「グラマー、ショービジネス、ポップミュージックの影響が強かったファッションをモダンな感性で再起動させるのが好きです」と語った。
オニツカタイガー
昨年末、イタリア初の旗艦店をミラノにオープン。それを機にミラノ・コレクションに初参加した。着想源は、70年代のトレッキング。ダウンジャケットやトレッキングブーツをキーアイテムに、短いアウターやショートパンツを取り入れた都会的なスタイル。花柄や幾何学柄が楽しい。クラブ風の空間でダンスパフォーマーがモデルになった。
エルマンノ・シェルヴィーノ
エレガントなレースのドレスを得意とする。ニットアイテムが目を引く。ローゲージのジャカードニットのセーターはほっこりとした雰囲気だが、肩のカットアウトからのぞく鎖骨が女性らしさをプラスする。たっぷりとしたニットカーディガンのウエストを絞ってドレス風に着るスタイルも。ニーハイブーツと合わせて軽快に着こなす。