21~22年秋冬NYコレクション コロナ禍の影響色濃く

2021/02/18 10:59 更新


 ニューヨーク・コレクションは、「ランウエー360」と「NYFW」の二つのプラットフォームで発表されている。ブランドによって両方または一つのプラットフォームで配信するが、プラットフォームの在り方もコレクションの見せ方もデジタルの特性を生かした進化が目立つ。ランウエー360はアメリカンエクスプレスと提携し、アメックス会員のみが利用できる特典を設けた。NYFWでも特定の商品をその場で買えるようにしたブランドがあり、消費者を意識した試みがみられる。NYFWはトークコーナーがあり、ジェイソン・ウーはメイクアップアーティストと対談しながら新発売のコスメラインを紹介した。コレクションは、コロナの影響が様々な形で投影されている。

(ニューヨーク=杉本佳子通信員)

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 ライブストリームで見せたジェイソン・ウーは、打ちっぱなしのコンクリートにコーラの瓶が詰まったクレイト、カラフルなフルーツと野菜、花が並ぶスーパーマーケットのような空間を舞台にした。ジェイソンは自宅待機中に発見した料理の楽しさを、ニューイングランドの牧歌的な思い出に重ねた。ディスプレーに使ったもの全て、困窮するニューヨーカーに寄付するアイデアも時代を反映している。前回同様、コンテンポラリーなラインで、手仕事を加えたアメリカンスポーツウェアを見せた。ロング&リーンのコートとドレスがメインで、コートの裾に段々にフリンジを付けたり、ドレスに長いひもやリボンを加えてたなびかせている。切りっぱなしの布をたたいてモチーフを描き、そこから布を垂らして動きをつけたコートもある。プリントは、「コカ・コーラ」の瓶を並べた柄が楽しい。イチョウの葉っぱ、千鳥格子、ボーダーストライプ、アブストラクトプリントなど、いろいろな柄を見せた。

ジェイソン・ウー(写真=Dan Lecca)
ジェイソン・ウー(写真=Dan Lecca)

 プラバル・グルンは、プレフォールと秋物を混ぜて動画を配信した。その動画はニューヨークへのラブレターで、ダイナミックに動き回るモデルたちに、「ニューヨークは本当にロマンティック」「ニューヨークにいる時は、いつも映画の中を歩いているかのよう」「クレイジーだから好き」「ニューヨークがエネルギーをくれる」などのメッセージを重ねる。「コロナ禍で多くの人が立ち去った中で、自分はこの愛すべき街に留まる義務があると信じている」と語るプラバル。愛と美のシンボルとしてバラを選び、プリントとコサージュに使う。ポルカドット、花柄、量感のあるラッフル、ドレープ、パフスリーブ、リボン、大げさに広げたベルボトムパンツと、ロマンティックな要素がいっぱい。色は赤、黒、白に絞り込み、メンズとウィメンズをミックスして見せた。

プラバル・グルン(写真=LEEOR WILD)

 イミテーション・オブ・クライストが配信した動画は、ドクンドクンと鼓動する大きな3D心臓のそばにモデルが立つスタイル。やがて心臓から花が出てきて弾け、心電図が平らになる時に聴かれるピーという音が鳴り響く。命の循環を意図した展開だ。デザイナーのタラ・サブコフは親友の1人をコロナで亡くし、自身もコロナに感染した。「このコレクションを愛する人を亡くした人々に捧げる。肌の色や信条にかかわらず、お互い優しくしよう。心臓が動く時間は限られているのだから」というメッセージを最後に掲げた。服はロマンチックな気分を入れたグランジ。ラッフル、透ける素材、フリンジを多用しながら、アンダーグラウンドのカジュアル感が強い。

イミテーション・オブ・クライスト(写真=Alexandra Cabral)

 タダシ・ショージが配信した動画は、焼け野原が舞台。がれきと化したピアノやシャンデリア、椅子が積み重なる上にモデルがすっくと立つ。困難な状況にあってもたくましく戦う女性像を描いた。ドラマチックな交響曲を流しながら見せた服はレース、ベルベット、オパール加工、ラメジャージーで仕立て、ドレープを入れたボディーコンシャスなドレス。クラシックなスタイルだが、黒の革手袋、膝上まである黒の編み上げブーツで力強さを強調した。背景に入れた真っ赤な太陽に、未来への希望を込めた。

タダシ・ショージ

 PH5のデザイナー、ゾーイ・チャンピオンはコロナ禍でメンタルヘルス問題を抱えた時、手元の枕をいじりながら創作意欲を復活させたという。そのため、もこもこしたキルティングを心地よい鎧(よろい)と位置付けて取り入れた。よれたような前立て、少しゆがんだチェックはブランケットに着想している。明るいフクシャピンク、ティールブルー、ラベンダー、ミントグリーンが明るい気分を呼び起こす。91%の素材は、リサイクル素材やオーガニック素材を使った。

PH5(写真=Kun Seok Lee)

 アディアムはゆったり羽織るラップコート、袖付けに寄せたタックがポイントのパーカなど、柔らかい動きのある優しいトーンの服が揃う。ミニドレスは、スイングする裾と露出した肩がポイント。日本の型紙メーカーが設計したプリーツは、日本の技術を現代アートに反映させる意図で取り入れた。色はベージュ、ベビーピンク、ベビーブルー、白に鮮やかな赤と深いバイオレットをプラス。後半はシンプルでクリーンな部屋着のカプセルコレクションで、メンズも見せた。

アディアム(写真=Matthew Sperzel @ unknown)


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