20年春夏パリ・コレクション シンプルな中に際立たせる“らしさ”

2019/09/26 06:30 更新


Medium %e3%82%bf%e3%82%a4%e3%83%88%e3%83%ab%e3%81%aa%e3%81%97%e3%81%ae%e3%82%b3%e3%83%a9%e3%83%bc%e3%82%b8%e3%83%a5  6

 【パリ=小笠原拓郎、青木規子】20年春夏パリ・コレクションはここ数年、初日に続き2日目も若手のショーが軸になっている。そのなかで評価に大きな差が出てきた。マリーン・セルとコシェが一歩も二歩も先に進んでいる印象だ。いずれも今シーズン、力強いショーを見せた。トレンドはほかの都市と同様に、色柄を抑えたシンプルなデザインが広がっている。キーカラーは黒。ブランドのアイコンや強みを最大限に生かして、シンプルなスタイルのなかに〝らしさ〟を際立たせるブランドが増えている。

(写真=大原広和)

【関連記事】20年春夏パリ・コレクション 若手が力強く

 夜のエッフェル塔が輝く空間にステージが作られる。床には無数に埋め込まれたスポットライト。ショーのスタートとともに、そのスポットライトが躍るように回転しながら夜空を彩る。ダンスするように白い光が駆け巡り、その光の間をモデルたちが歩いてくる。

 黒いショートパンツにテーラードジャケット、カットオフのデニムハーフパンツにベルベットジャケット、ブレザーにデニムシャツ。アンソニー・ヴァカレロのサンローランは特有の若々しいミニスタイルを軸にしたラインが揃う。

サン・ローラン

 夜空に輝く白い光と呼応するように、ラメのヘッドピースやラメのシャツ、ビジュードレスにゴールドのブーツといったアイテムが次々と現れる。サンローランの象徴ともいえるフォーマルスタイルもさまざまなバリエーションが広がった。

サン・ローラン
サン・ローラン

 デムナ・ヴァザリアの「バレンシアガ」をはじめ、今、ショーの見せ方は大きく変わってきている。アーティストによるLEDの光のアートとともに服を見せたり、今回のようにスポットライトのダンスの中で服を見せたりといった具合。90年代から2000年代初頭にかけてはアレキサンダー・マックイーンがアーティストのニック・ナイトのチームとともにファッションショーに劇的な演出を取り入れてきた。

 その全てを否定するつもりはないのだけれど、演出だけではなく服の持つ力をぐっと感じられるかどうかが気になるところ。時代に合わせて新しい技術や見せ方が生まれ、ショーの演出が変わるのは当たり前だが、その結果、服が持つエナジーをどう届けられたのか。今回のサンローランからは、そのあたりのもどかしさも感じている。

 アンリアレイジの招待状は、斜めから見たハガキが描かれている。コレクションには服をデフォルメしたようなラインが登場する。極端に肩の周りや襟が大きく、ボトムに向かって小さくなっていくスタイル。逆にボトムが大きくてトップに行くにしたがって小さくなるスタイルもある。

 テーマはアングル。形をどこから見るかによって、違って見える。同じブレザーでも上から見るとショルダーが大きく、下から見ると襟が小さく見える。斜め横から見ると手前のラペルやポケットが奥のラペルよりも大きく見える。そんなアングルの差によって遠近法のように見え方が変わる現象をディテールやフォルムに生かした。

アンリアレイジ

 マリーン・セルの招待状は、折り畳み傘。霧雨が降るパリ・コレ2日目の天気にぴったりな招待状を手に、屋外の会場に観客が集まった。傘は黒、迎えてくれるスタッフも黒ずくめ。厚く雲のかかった空と相まって、ダークトーンのムードが演出されていく。

 そこに登場したのは、黒一色のルックだ。デビューから鮮やかな色とシグネチャーの三日月の柄で力強さを表現してきたが、冒頭にブランドの顔を封印して黒の世界を徹底した。大きな頭巾が一体化したような丸く膨らむプルオーバーに、ふわっとした量感のバルーンスカート、エナメルのポインテッドトウのブーツ。黒いルックの中に赤い光が輝き、怪しい雰囲気をかもし出す。

 ワーク調のジャンプスーツや、三日月柄がうっすらと浮かび上がるノーカラーコートも黒。いつもよりもシンプルだが、手に持つ赤いボールバッグや赤のライトがどことなく怖さを助長する。黒から赤一色になるとその怪しい力強さは一層強まる。

 三日月と四つ葉模様を組み合わせた新しいロゴは、タロットの模様のようにも見える。中盤、真っ白なレースのドレスすらも、マリーン・セルのフィルターを通すと無垢(むく)な雰囲気とは無縁だ。長い爪とタトゥー柄のようなボディースーツと合わせ、すごみを演出した。

マリーン・セル

 コシェが会場に選んだのは、ポンピドゥー・センターの図書館。パリを象徴する場所の一つであり、本が整然と並ぶ公共の空間に、コシェらしい強さと艶やかさを併せ持つドレスが勢揃いした。

 ワークやスポーツのリアルスタイルに、クチュールの技を散りばめるのがコシェの真骨頂。今シーズンはより女性らしくシックなラインへとシフトした。レースをはぎ合わせたTドレスに、ドローストリングを絞って身頃を体に沿わせたキャミソールドレス。パンツやドレスの裾からは軽やかなフェザーがたっぷりとのぞき、スパンコールやビジューが輝きをプラスする。華奢(きゃしゃ)なレースのブラには、レースをはいだ淡い色のパンツスーツ。優雅に揺れるカプリーヌもエレガントだ。

コシェ

トレンドセミナーのお申し込みはこちら


Bnr counter agreement
Bnr denshiban

この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事

Btn gotop