20年春夏ミラノ・コレクション「グッチ」 レトロで控えめな装飾

2019/09/25 06:29 更新


 【ミラノ=小笠原拓郎、青木規子】20年春夏ミラノ・コレクションには、色柄を抑えたシンプルなスタイルが広がった。色柄ミックスやレイヤードを推してきたブランドも、ブラックドレスやワンカラーコーディネートを提案している。

 一つの服にたくさんの要素を詰め込むのではなく、一つひとつの色やディテールに焦点を当ててきりりとした女性らしさを表現している。きれいなパステルカラーのパンツスーツ、カットワークを飾ったシンプルなドレスなどが新鮮だ。

(写真=ブランド提供)

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 いつになくシンプルで、名刺サイズの小さな招待状がグッチから届く。その招待状をもとにショー会場に入ると、幻想的な赤い空間。天井にある星型の照明からの赤い光にいささか苛立(いらだ)ちも感じながら、目を凝らすとシートの前には動く歩道が作られている。その両側にあるスチールのシャッターが上がると歩道が動き始める。


 白。少し薄汚れているようにも見える白のトータルスタイルのモデルが次々と現れる。キャンバスのようなざっくりとした素材感、背中のバックルで留める拘束着のようなディテール。コンビネゾンやセットアップも含めて、ワークウェアのようにも見えるのだが、何か不穏な空気を持っている。

 サステイナブル(持続可能)に力を入れているブランドだけに、再生繊維を使った製作過程の何かなのかなどといろんな考えが浮かぶ。突然、暗転すると、不穏な白い服のモデルは一斉にいなくなっている。そこからはグッチらしい鮮やかな色をのせたラインがスタートする。

 70年代を思わせるフレアパンツとショートジャケットのスーツ、カットワークのパープルドレス、デニムを切り替えたセットアップ。レトロなムードたっぷりのアレッサンドロ・ミケーレの世界だが、心なしかいつもよりも装飾は控えめ。デコルテを強調したブラウスなど、フェティッシュな雰囲気はあるけれど、装飾に装飾を重ねていくようなこれまでのラインとは少し異なる。

 安らぎ、くつろぎ、複雑性からの脱却。春夏トレンドにそんな言葉が広がる中、グッチまでもがその流れに向かおうとしているのだろうか。前半の白い服のシリーズの残像が、そんな思いにさせる。


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