19SSロンドンコレ 花柄メインにたくさんの柄広がる

2018/09/20 06:30 更新


 【ロンドン=小笠原拓郎、若月美奈通信員】19年春夏ロンドン・コレクションにたくさんの柄が広がった。花柄はもちろんメインで、壁紙のようなレトロなフラワーから極端に大きなフラワーまで揃う。花柄以外で目立つのは、チョウ、昆虫、生き物の柄。プリントだけではなく立体的な刺繍で描く花や生き物柄が、繊細さとともに生々しいパワーをはらむ。タイポグラフィーやアニマル柄も登場している。

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 クリストファー・ケインの世界には、ずっとセクシュアリティーを巡る強迫観念にも似た何かが存在している。ここ1年にわたって、家事にいそしむ主婦のセクシュアリティーを背景にしたコレクションを続けてきた。この春夏も大きなショルダーラインで強さを強調しながら、カットワークやハーネスのディテールで素肌を見せることで官能性をアピールする。

 ジャカードのスーツはウエストシェイプとバックのカットアウトがポイント。ジャカードやレースのパーツをハーネスのようにつなげて肌感を強調し、バックにドレープをとったボリュームTには「セクシュアル・カンニバリズム」の文字とともにカマキリのプリントがのせられる。

 ショーの後半はビジューのモチーフがいっぱい。ビジュープリントのドレスのほか、シャツの胸元をV字にカットしてビジューをつないではめ込んでいく。グリッタードレスやビジューをシート状にしたアップリケのドレスなどキラキラときらめくドレスとともに、ビッグショルダーのタキシードスーツが迫力を生み出す。

 ケリンググループから離れ、再びインディペンデントのビジネスへと足を踏み出すケイン。ここ1年のコレクションよりもプロダクトの持つ迫力を感じられた。

クリストファー・ケイン

 大胆なプリントドレスで注目のリチャード・クインは、次のステップに向けての正念場を迎えている。前シーズン、第1回英国デザイン・クイーン・エリザベスⅡアワードを受賞した期待の若手。そのドレススタイルは、エネルギーにあふれている。

 一方で、プリントの先のデザインの引き出しがどれくらいあるのか、次のステップをどう見せるかが問われるシーズンにクインが見せたのは、黒一色のチュールのドレスや黒いダッチサテンのボリュームドレス。モデルは匿名性を感じさせるブラックマスクをしている。

 その不穏な空気で始まったコレクションに次のステージを一瞬、感じたのだが、そこからは花柄、ペイズリーのビジュー刺繍、アニマルプリントのファスナーといった柄の世界へ戻っていく。そのプリントや刺繍のデザインに強さがないのかと問われればそうではないのだが、やはりクインに対する期待度が高すぎたのであろう。新しい一歩に踏み出しかけて、半歩止まりといったところか。次のステップにいつ本格的に踏み出すのか、期待は募る。

リチャード・クイン

 ロンドン・コレクションのメンバーとしてすっかり定着したトーガにとって、今シーズンは試練の時となった。トーガのショーの1時間後には、リカルド・ティッシによるバーバリーのデビューショーが控えている。加えてバーバリーが定刻通りにショーをすると発表したこともあって、これまでトーガを見に来ていた海外ジャーナリストの足並みが乱れた。

 そんな逆境の中のショーは、古田泰子らしいデコンストラクトのエレガンス。「スポーツ、エアー、スクランチド(あわてさせる)」をキーワードにしたラインは、ジャケットのサイドにアブストラクトに穴があき、直線的にカットされたプリーツスカートがアシンメトリーなラインを描く。

 ケミカルタッチのグリーンドレスにメッシュのリュックやブーツ、ドローコードやケミカルカラーのファスナーがスポーティーな気分を加える。パンツスーツはインサイドアウトで裏地にたくさんのフリルを飾ったもの。そこだけ、90年代のコムデギャルソン・オム・プリュスのようなイメージと重なって見えた。

トーガ

(写真=catwalking.com)



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