19春夏デザイナーコレ テーラード中心のエレガントへ

2018/10/10 06:30 更新


 19年春夏デザイナーコレクションは、大きくトレンドが変わるシーズンとなった。ここ数年のビッグトレンドだったボリュームシルエットを背景にしたストリートスタイルが激減し、テーラードが中心のエレガントな方向へ移っている。クチュールテクニックを生かしたドレスも含め、ストリートの軽やかなムードとは違うエレガンスが主流だ。

(小笠原拓郎編集委員)

【8/16掲載】《小笠原拓郎の目》19年春夏欧州メンズコレクション ジェンダーを巡る時代の変わり目

〈スタイル、テーマ〉

 春夏トレンドの背景には、この間のメインだったストリートスタイルの終焉(しゅうえん)が影響している。トラックスーツに代表されるスポーティーなストリートスタイルの流れが一気に弱まる一方で、その対極ともいえるテーラードスタイル、スーツといったラインが脚光を浴びている。

 テーラードスタイル、スーツに注目が集まるのには、アンドロジナスなムードがキーワードになっているからでもある。男性モデルと女性モデル、ジェンダーレスのモデル、様々なモデルを起用して、男性服と女性服のジェンダーの有り様を表現する。実際にジェンダーを超えた服を提案したブランドは多い。「メゾン・マルジェラ」「ジバンシィ」「ルイ・ヴィトン」「セリーヌ」といったブランドがテーラードジャケットやスーツを軸にマスキュリンとフェミニンの新しい考えを提示した。

メゾン・マルジェラ

 ここ数シーズン、トレンドとしては後退していたリラックスやエフォートレスの要素も戻ってきた。ナチュラルな気分を反映したリゾートスタイル、クロシェやフリンジ、タッセルといったディテールを生かしたラスティックなムードが再び勢いづいている。このリラックスした気分と重なるところもあるが、春夏らしいマリンイメージやビーチスタイルが広がっている。パラソル柄のプリントやタイダイのレトロな南国のムード、スイムウェアをコーディネートに取り入れたスタイルなどがトレンドとして浮上している。

 マスキュリンなテーラードスタイルの一方で、女性らしさを強調した透け感を際立たせたスタイルも出ている。ボディースーツやチューブトップ、ブラトップといったアイテムとハーネスのようなアイテムやカットワークのトップを組み合わせ、スポーティーでありながら素肌を強調したラインだ。

〈アイテム〉

 テーラードジャケットやスーツ、コートなどのアウターが注目されている。ドレスはリラックス感のあるカフタンやシャツドレス、セミフレアドレスなどが増えた。スカートはアシンメトリーやマーメイドスカートが広がった。パンツはワイドやフレアのほか、サイクルパンツやカーゴパンツが期待される。

〈色柄、素材〉

 パステル系の色使いと黒と白の二つの流れが出ている。パステル系の中ではピンクからパープルと、イエローからオレンジにかけての色が注目だ。柄は花、ロゴ、ペイズリー、タイダイ、タイポグラフィーなど多彩。素材は上質なダブルサテンのエレガンスとリネンやコットンポプリン、ツイルなどのナチュラルなタッチが目立つ。透け感はPVC(ポリ塩化ビニル)のケミカルな雰囲気とクロシェやレースの繊細なものの両極が登場した。

〈デザイナー〉

 アンドロジナスなムードを背景にしたジョン・ガリアーノのメゾン・マルジェラは、ジェンダーフルイド(流れるような性差)をキーワードにしたラインで話題となった。マラケシュのリラックスしたムードとハンドクラフトの技術を散りばめた「ヴァレンティノ」もその美しさが際立っている。これまでのアート的な抽象表現を捨て去り、シンプルでありながらその精神性をデザインしようとした「コムデギャルソン」のコレクションも心に染みた。

ヴァレンティノ

(写真=大原広和)

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