19~20年秋冬パリ・コレクション 肩にポイント置いた強い女性像

2019/03/06 06:28 更新


 【パリ=小笠原拓郎、青木規子】19~20年秋冬パリ・コレクションには、ショルダーラインにポイントを置いた強い女性像が広がっている。

 スクエアショルダーの張り出した肩、あるいはラウンドショルダーの膨らみ、コンケープトショルダーのように袖山にボリュームを取った肩もある。構築的なショルダーラインのテーラードスタイルがビッグトレンドとなっている。

(写真=大原広和)

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 バレンシアガのショー会場に入ると、アスファルトの匂いが立ち込めている。ストリートの匂いを再現した空間に、さまざまな色の光が天井から照らされる。

 秋冬もコンセプチュアルなカッティングで描く緊張感を秘めたスタイル。スクエアショルダーのコートやスーツは、以前に比べるとショルダーは張り出さずに、袖山の部分だけでボリュームを強調する。ショルダーラインの後ろ側に布を寄せて高くすることで、極端な肩の傾斜を作ったコートもある。

バレンシアガ

 ドレスは胸元に刺繍枠のような丸いリング状のパーツを入れて、そこからギャザーを流す。

バレンシアガ

 フェイクファーのコートはデフォルメされた大きな袖と後ろに襟を抜いたフォルム。

バレンシアガ

 極端にデフォルメされたカッティングが面白い。クリストバル・バレンシアガといえば、なんといってもカッティングに対する美意識の高さだ。既存の美を超える新しい美を探るフォルムを追い求めてきた。デムナ・ヴァザリアもそこを意識してのコレクションではあろう。

 しかし、デムナのカットとクリストバルのカットに対する違和感も感じる。クリストバルが純粋に新しいカットを追い求めてきたのに対して、デムナはバズ(騒動)を起こすためのカットを作っている気がしてならない。現代がそういう時代だから、それはそれで仕方がないことなのかもしれないが。

 既存の美とは違う新しいカットの持つ力は、時代を変えるファッションの原動力。純粋にそこを追求し続けていくには、かつてのメゾンの時代に比べて、現代はスピードが求められすぎている。

 ここ数シーズン、軽やかさや女性らしさを表現してきたステラ・マッカートニー。今シーズンは強くてシャープな雰囲気が強まった。肩を強調して直線的なラインを描くコートやドレス、ジャンプスーツが揃う。

 コートやドレスは少しせり出したショルダーポイントからウエストまで直線を描き、ウエストをベルトで絞って、腰から膝下までをたっぷりと包み込む。マスキュリンなムードを高める直線が随所にちりばめられ、直線を太いラインで強調したコートもある。柔らかなピンクや黄色のドレープドレスも、かっちりとした肩パッド入り。ドレスも近年の緩やかなイメージとは違ってぐっとパワフルになった。

ステラ・マッカートニー

後半はミリタリー調のジャンプスーツやトレンチコート。クリップを連ねたイヤリングや糸を束ねたネックレスで、どことなくトライバルなムードを加える。今回は森林保護の新キャンペーン「#ThereSheGrows」も発信した。

ステラ・マッカートニー

 エルメスの円形の会場は、壁の木の格子の向こうから光が瞬く。前回の青空から、今回は夜の星空が背景になった。そのロマンティックな光景とシンクロするように、スタッズを星空のように散りばめたスエードのセットアップからショーが始まった。

エルメス

 星空を力強く歩く女性をイメージに、レザーを主役にしたタイトフィットのドレスやゆったりとしたコートが揃った。そこにブランドのDNAにある乗馬のストーリーを散りばめる。騎手が着るスタンドカラーのユニフォーム、勲章のメダイヨンのフリルディテール、ペンシルスカートやジョドパーズパンツといったスタイル。

 ドレスやチュニックを彩るスカーフプリントは、1962年発表の馬の衣装の柄。乗馬用のブランケットから着想したダブルフェイスのコートがたっぷりと体を包む。フォレストグリーンやオレンジ、赤茶など自然になじむ色に染まった。

 ジバンシィは夜の植物園にテントを設けて、極端に長いランウェーを作った。クレア・ワイト・ケラーらしいマスキュリンなテーラーリングとプリーツドレスがキーアイテム。コートやジャケットは今シーズンのトレンドとなる肩にポイントを置いたもの。縫い代を残したようなラウンドフォルムの構築的なショルダーラインから丸みを描くスリーブへと続く。

 プリーツドレスは、たくさんの花やチョウの柄を描いた布を細かく畳んで作ったもの。袖口や襟元、裾がくるんとカーブしたディテールとなる。大きなバルーンスリーブをつけたレースのブラウスなど部分的な量感を入れたディテールも特徴。

ジバンシィ

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