【パリ=小笠原拓郎、青木規子】カール・ラガーフェルドが亡くなって改めて、老舗ブランドとデザイナーのクリエイションのあり方に注目が集まっている。19~20年秋冬コレクションでは、歴史あるブランドの新しいディレクターに選ばれたデザイナーたちが、それぞれの知識や技術をもとに見せた。
ブランドの歴史やアーカイブのどこを抽出し、新たな魅力を加えて今の時代にどう表現するのか。その力量とセンスが問われている。どれくらい自らの色を出すのか、あるいは出さないのか。そのさじ加減によって、コレクションの評価が変わる。
(写真=大原広和)
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セリーヌが変身した。エディ・スリマンの持つ黒やロリータ、マスキュリン、ロックといったイメージを封印して、トラディショナルなスタイルへと転換した。
ネイビージャケットにボックスプリーツのキュロット、ガンクラブチェックに杢グレー。トラディショナルな素材と柄の組み合わせは、BCBG好きの女性にぴったりと寄り添うもの。ボウブラウスやスカーフが襟元を彩り、大きなブリムのハットがエレガンスを主張する。
エディ・スリマン特有のスタイルからの大幅な軌道修正。メゾンのコードやアーカイブに立ち返ったのは、ブランディングの定石通りではあるが、となると前シーズンの意味はどこにあるのだろうか。現地メディアはおおむね好評のレビューを載せているようだが、果たして市場はどう受けとめるであろうか。
ロエベのショー会場といえば、アートや工芸品が並ぶ温かい雰囲気が定番だが、今回は黒い寄木細工のフロアを整然とライトで照らすモノトーンの空間。白い壁には16~17世紀のイギリス人やフラマン人のミニチュアポートレートが並ぶ。
シンプルでクラシックな雰囲気が漂うなか、作品もクラシックな要素が軸になった。象徴的なファーストルックは、ウエストを少しだけ絞ったシングルブレストの黒いコート。ショールカラーのロングコートやニットのロングケープなど他のアウターも充実した。
白いブラウスもキーアイテム。大きなフラットカラーやボウタイ、ビショップスリーブなどクラシカルなデザインが盛り込まれている。もちろん、そこにはジョナサン流の軽さや楽しさも垣間見える。
ジャケットやコートの袖口からは大きなポンポンや長いリボンが垂れ下がり、部分的なレース使いが抜け感となる。装飾はあるが重さはなく、かつてのアブストラクトを秘めたミニマルな方向へ戻りつつある。丸いモチーフがついたユーモラスな帽子は、ミッドセンチュリー時代の帽子から着想した。