18年春夏ミラノ SNS狙いの服作りは変わるのか?

2017/06/21 04:30 更新


 【ミラノ=小笠原拓郎】18年春夏ミラノ・メンズコレクションは、数シーズン続くラグジュアリーストリートの流れが依然として強い。テーラードを背景にしたミラノの伝統を、ストリートスタイルが凌駕(りょうが)している。「今はおしゃれを着るっていうよりも、ネタを着る流れだから」。あるファッションディレクターと話した時に、そんな言葉が飛び出した。ネタとはつまり話題であり、奇抜さだ。アイコン的なものを着るのが時代の流れであって、それは本当におしゃれであることとは違うという意味だろう。SNS(交流サイト)で拡散して話題をつくるため、“飛び道具”のようなアイテムを身にまとう。それはまるで、現代のかぶき者だ。

 しかし、そんな流れも転換期を迎えつつある。フィレンツェのピッティ・ウオモ会場でも、これでもかと“盛った”スナップ狙いの紳士たちは、かつてに比べると少なくなった。ラグジュアリーストリートの市場でも、SNSの魔法が解ければ、進化しないブランドはただのスポーツカジュアルでしかない。ランウェーにおいても徐々に本質的なものが見えてきた。(写真=catwalking.com)

フェンディ

 フェンディのコレクションはここ数シーズン、ラグジュアリーストリートの流れもあって、ゴージャスなファーやレザーを生かしたスタイルが人気となっていた。しかし、今シーズンのようにバッグを飾る刺繍やチャームがなくなると、そこにはフェンディの持つシンプルなぜいたくさが見えてくる。スエードとエナメル、ファーを切り替えたブルゾンなどからは、ブランドの本質にある、ファーやレザーの細かなテクニックが浮かび上がる。それと同時に、メンズスタイルへのフォルムの探求という点では、フェンディはそれほど深く考えていないようにも思える。どこかボックスに近いシルエットは、その上質なレザースタイルのエッジに丸みをもたせる。



ジョルジオ・アルマーニ

 ジョルジオ・アルマーニのコレクションも、その本質が見えてくる。80年代以降ひとつの時代を築いたデザイナー、そのソフトコンシャスなスタイルは、メンズ市場に圧倒的な影響力を持った。春夏コレクションは「メイド・イン・アルマーニ」がテーマ。そんな背景もあってだろう、肩でホールドして流れるようなドレープを作るアルマーニスタイルのジャケットの美しさが強調される。シャンタン、洗いをかけたナチュラルなしわ感、ニュートラルカラー。アルマーニらしさを生かしたジャケットスタイルが中心。タイドアップしたスーツはほとんどなく、柔らかなエレガンスを見せた。



サルバム

 ミラノ・メンズにデビューしたサルバムは、これまでよりぐっと軽いラインへと変化した。切りっぱなしの裏地がドレープを描くジャケットやコートのディテールはそのままだが、生地がシアサッカーをはじめとする夏らしいものになっている。ボンデージパンツやサルエル風オーバートラウザーもシアサッカーだ。新アイテムは、デニムジャケットやデニムパンツ。カットオフのぼそぼそとした端糸やパンツのフロントに付けられたジッパーでヘムラインに変化をつける。これまでのちょっとやんちゃなイメージは、トラディショナルな素材によって上品な印象になった。しかし、サルバムの魅力は、斜に構えた姿勢を持つ人たちの艶っぽさのようなもの。軽さをイメージするのはいいが、その魅力までややそがれてしまったように思える。





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