【ロンドン=小笠原拓郎、若月美奈通信員】17~18年秋冬ロンドン・メンズコレクションには、ソフトな素材で作るデコンストラクトなスタイルが広がっている。その流れとして、異素材のはぎ合わせによるリサイクルやアップリケを多用したカスタマイズも多い。チャンキーな編み込みセーターからディテールの変化で見せるローゲージのセーターまで、ニットウェアが充実している。
■KTZ
KTZは黒と白をベースに、たくさんのレースアップのディテールを取り入れた。スウェットパーカのようなストリートアイテムが靴ひものような白いひもで締め上げられ、フェティッシュな空気をはらむ。ウエストに付けられたレースアップパーツは、まるでコルセットのようでもあり、大きなサイズのパーカに変化を作る。後半はキルトスカートを思わせるプリーツスカートやギャザースカートのレイヤード。ストリートのやんちゃな空気をベースにしながらも、新しい服のありようを模索した。
■ヴィヴィアン・ウエストウッド
ロンドン・メンズコレクション初参加となったヴィヴィアン・ウエストウッドは、メンズとレディスを一緒に見せた。ずるずるのパッチワークセーターの男性からスタートしたショーは、裾をジオメトリックにカットしたかっちりとしたテーラードスーツの女性、同じジャケットの男性、ヴィヴィアン自身のポートレートやお化けの顔がいっぱいプリントされたエレガントなドレスの女性などが入り交じる。紙の王冠のモデルに続くのは王冠のように履き口がジグザグになったロングブーツ。切りっぱなしのウール地を肩から流したようなコートも多く、政治的スローガンがアップリケされたトップやクロップトパンツも切りっぱなしだ。レディスとメンズ、丁寧に仕立てたテーラードとデコンストラクトなカジュアル、高尚なものとチープなものが終始シャッフルされる。ニットのタイトスカートやレースのドレス姿の男性に見慣れた頃には、コルセットが透けるチュールのドレスを着た男性にも驚かない。
■チャラヤン
チャラヤンも初めてのロンドン・メンズ参加で、フロアショーを見せた。スーツスタイルのパンツは膝下丈で、膝裏にスラッシュが入っている。丸いショルダーラインが特徴で、ダブルフェイスでケープのようなフォルムを作り、ショルダーからヨークに向けて生地をカバーリングしたようなディテールもある。ニットショール襟のコートはショールがそのままニットポケットとつながる。落ち着きのあるスタイルの中に、チャラヤンらしいコンセプトが込められている。
■シブリング
シブリングは、アントニオ・ガウディの建築物からイメージを広げた。得意のニットの柄は、有機的な曲線のモチーフ。バルセロナのグエル公園のタイルを思わせる柄をスパンコールやジャカードでニットにのせた。フリルニットをサイドに飾ったパンツなど、新しいアイテムはあるが、ここ数シーズンのようなユーモアたっぷりの弾け方とはほど遠い。
■ウェールズ・ボナー
LVMHヤングファッションデザイナープライズを受賞したウェールズ・ボナーは、コンセプチュアルで詩的なコレクションを見せた。前シーズンのアフリカを背景にしたテーラーリングの模索から、グラマラスな素材や色を強めている。ギラギラとしたチェック柄のトップは、メタルビジューで作ったものもある。その一方で意味ありげなエクリュの妖精のようなモデルも登場する。プライズを受賞して素材に幅が出て来た。
■クリストファー・レイバーン
クリストファー・レイバーンはリメイドやリサイクルといったコンセプトを背景にしながら、独自のアウトドアスタイルを作る。たくさんのベルトとバックルを飾ったアウターからスタートして、ペラペラのナイロンのセットアップや裏毛を切り替えたスウェットセットアップへと続く。アップリケによるカムフラージュ柄のダッフルコートやブルゾンとともに、モノトーンに黄色を加えたカラーブロックのニットコートやパッデッドジャケットも目を引く。
■ジョン・ローレンス・サリバン
パリからロンドンへと発表の場を移してのジョン・ローレンス・サリバンは、テーラードスタイルをベースにボリュームラインを描いた。伝統的なブリティッシュチェックのジャケットやコートは縦長のシルエット。そこに袴(はかま)のような量感のワイドパンツを合わせる。ハードなレザーのコートは太いジップを走らせたレザーパンツと合わせた。たくさんのスウェットトップとベースボールキャップが、どこかスカリーな気分を持ち込む。それは今のトレンドのど真ん中なのだが、どこか違和感も感じてしまう。柳川荒士の持つ時代感や時代とのズレのようなものがもっとあるようにも思うのだが。
■メゾン・ミハラヤスヒロ
メゾン・ミハラヤスヒロがショー会場に選んだのは、植物が生い茂る空間。そこで見せたのはベルトやバックルがやたらと大きなブルゾンやコート。テープを垂らしたミリタリーコートやジャケット、ネットにファーで描いたタイポグラフィーのコートなどが揃う。前回のボウリング場のショーでは、50年代やスカジャンといったアイテムを出し、今回はポエトリーリーディングとともに見せるナチュラル気分。ブランドのアイデンティティーが見えてこない。(写真=catwalking.com)