インクジェット捺染機専業メーカーの伊MS(バレーゼ県、ルイジ・ミリーニ社長)は、コモ県に研修センターを開設した。ユーザーの研修に活用するだけでなく、ここで社内のエンジニアを育成し、拡販体制を整える。機種開発では今年、スキャン式の最高速機を発売する予定で、グローバルな需要増に対応する。
(中村恵生)
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社長の息子で、4月に社長に就任するパオロ・ミリーニ副社長が研修センターの狙いや今後の方針を明らかにした。
研修センターは本社近郊の1万平方メートルの土地と建物を取得し、昨年10月にオープンした。総投資額は600万 ユーロ 。パソコンを備えた研修室やセミナールーム、会議室などで座学を行うほか、デモプリント用に最高速シングルパス機「ラリオ」の16ヘッドタイプ、スキャン式の「JP‐Kエヴォ」「JP7」「JP4」「JP3」とほぼフルラインを揃え、スチーマーも置く。
すでに各国ユーザーのオペレーター育成に活用しており、1組5、6人で最短2日間の研修を受ける。一方、最大の狙いは社内の人材育成だ。「この間、急成長しすぎた。年20~30人を新規採用しているが、技術者の教育を急ぐ必要があった」という。全機種合わせて年300台を販売しているが、大型機のラリオだと技術者4人が3カ月がかりで設置するため、年6、7台が限界という。
11年にラリオを発売して以来、伊9台、トルコ6台を筆頭にスペイン、インド、中国、パキスタンなど累計22台を販売、シングルパスで世界トップの実績を持つが、環境規制やデジタル化を追い風に今後も各機種で販売増を見込んでおり、人的背景を整える。また、同様のセンターを中国、米国、トルコでも開きたいとし、伊でノウハウを蓄積する。
研修センターの余剰スペースは今後、製造工場として整備する計画で、本社工場との2拠点計2万平方メートルで機種を分けて製造する。
新機種開発では、今夏にスキャン式最高速の「ミニラリオ」を発売する。ラリオが毎分50~100メートル、従来最速のJP‐Kエヴォが5~10メートルに対し、ミニラリオは10~20メートルとこの間を狙う。品質が安定するスキャン式での高速のニーズもあり、これに対応した。5月には見本市のFESPAで別の新機種も披露する。
同社は14年に米ドーバーが買収した。管轄するドーバーデジタルプリンティング傘下にはMS、インクのJKグループ、ソフトウェアのカルデラがあり、合計売上高は2億ドル。MSは年17%成長で推移しており、18年度は売上高1億 ユーロ を計画する。