ザラはなぜ強いのか インディテックスの現場に迫る③

2017/07/31 05:00 更新


《連載 ザラはなぜ強いのか インディテックスの現場に迫る③》企画 デザイナーは600人 市場担当者が商品を見極め

 「ザラ」をはじめとする全てのストア業態でグローバルに高頻度、短サイクルの商品供給を実現するのに、インディテックスは、本社にできるだけ近い場所に生産、物流の機能を集約している。企画、デザイン業務も同様だ。その機能は創業の地・スペインに集中している。


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◆市場担当と一体

 年間5万の商品をデザインするのは600人の社内デザイナーだ。うち、半数強がザラの担当。本社のデザイナーが働くセクションにはパターンを作成する担当がおり、同じフロアにミシンやトルソーもある。デザイン画からサンプル作成まで、一つの場所でできる仕組みだ。

 ザラの場合、本社内の商品企画部門は商品ごとにフロアが分かれている。主力のウィメンズのセクションは2万4000平方メートル。テニスコート90面分以上の1フロアの片側にデザイン部門、もう一方に生産、調達担当が働き、中央に各市場の店舗とのやり取りを担当するカントリーマネジャーの席がある。

 商品の売れ行きを左右するデザイン部門には一定の権限があるが、企画の起点はあくまで店頭から寄せられる客のニーズだ。

 サンプルが商品化されるか否かの判断は、デザインチームの一存ではなく、同じフロアで働く生産担当とカントリーマネジャーとの議論の末に決まる。

 とりわけ重視するのが、ウィメンズ、メンズ、キッズと商品ごとに数十人いるカントリーマネジャーの意見だ。彼らは日々、どんな商品が求められているか、トレンドのどの部分が各市場の店の顧客に響いていて、次に何を作るべきなのか、客との唯一の接点である店舗の責任者から情報を得ており、それをデザイン部門に伝えている。

 実際に商品化される倍以上のデザインから仕上げた製品サンプルを見て、カントリーマネジャーは店頭で拾い上げた声が十分に反映されたか判断する。その上で生産・調達担当がどの素材を使い、どこで作れば、期中の適切な時期に店頭へ供給できるか見極め、商品化する。

広大な1フロアにデザイン、生産担当、カントリーマネジャーが集まり、働く。客の声を商品の形に変えていくという


◆素材傾向先取り

 春夏、秋冬いずれも立ち上がりの段階では、そのシーズンに売る商品の3割程度しか企画は決定していない。デザインチームは、「シーズン初め」「期中対応」「次シーズンの立ち上がり」と担当を分け、店頭の販売実績と客のニーズ変化をベースに、常に同時進行でそれぞれのタイミングの企画を考えている。

 「我々はファストファッションではない」。客の求める商品を正確に作るために、店から寄せられるニーズやウォンツを最も重視している。「半年後の商品を見せるキャットウォークトレンドを追いかけるのは当社の仕組みでは間に合わない」。その代わり、1年前に見えてくる素材傾向は注視している。

 各地の素材展を巡り、買い付けたテキスタイルの6割を本社倉庫でストックし、自社で裁断して各地の縫製工場に送る。ザラの店頭にトレンドに合うデザインや色、柄の商品が供給されるのは、素材段階のトレンドの先読みと客の声に沿った期中対応がうまくかみ合っているため。安易な後追いは「していないし、できない」という。

縫製工場に送る生地を無駄なく裁断するためにパソコン上でシミュレーションする


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