ザラはなぜ強いのか インディテックスの現場に迫る②

2017/07/30 05:00 更新


《連載 ザラはなぜ強いのか インディテックスの現場に迫る②》生産 本社近くで商品の6割作る 品番当たりの量抑えて新作投入

 インディテックスの原点は縫製工場だ。その工場が1975年、現在も本社のあるスペイン北西部の街、ア・コルーニャに「ザラ」の1号店を出した。取引先の小売店の受注に頼るのではなく、店頭で必要な量の商品をそのつど作り、自前の店で売る、という今日も続くビジネスモデルはここから始まった。

 工場が作る商品を自店で売り切るためには店数を広げる必要があった。1号店から10年で、スペインで店舗数を50まで拡大した。自前で作り、自前で売る商売の仕組みが国内市場で消費者に受け入れられたと見るや、海外でも店舗を増やし、ザラ以外の業態の開発にも着手した。


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◆距離の近さ重視

 一貫して重視しているのが「プロキシミティー」。ビジネスを行う際の距離の近さだ。プロキシミティーをファッションの商売に当てはめると、市場に近い国で作るか、本社に近い場所で作るか、2通りの考え方ができる。インディテックスの場合は後者だ。生産の6割は現在もスペインやポルトガル、トルコ、モロッコなど欧州とその周辺国が占める。作った商品はいったんスペインの物流拠点に集め、店に届ける。本社に近い距離で行うことで、売上高が2兆8000億円を超えてなお、市場変化への対応速度を維持している。

 昨年度、インディテックスが販売した商品点数は11億7700万点。これを世界93市場の7292店へ、個別の店舗の発注に応じて週2回ペースで届けた。膨大な量だが、実は1品番当たりの店頭に投入される商品点数はそれほど多くならない。

 1年に5万品番、ザラだけで2万品番を商品化する。生産量は商品の種類で違い、複数色作ることもあるが、1デザイン1色1万5000~2万点作るのが平均的な量だ。ザラの店舗は世界で2000を超えるので、全店が発注すると、計算上、1店当たりの入荷数が各色十数点程度の品番もある。

期中対応の速度と精度を両立するために本社の近くで生産する


◆期中も新商品

 1品番当たりの生産量を増やさない代わりに、シーズン中も、新商品を企画、生産し、店頭に投入し続ける。繁忙期、閑散期で届ける商品量にはばらつきがあるとしても、単純計算で週2回、商品をデリバリーすると、世界のザラの店頭に、毎週400品番近い新商品が届いていることになる。

 立ち上がりに投入する商品の販売実績や、店頭で来店客からくみ取った潜在ニーズは、店からの商品発注と同様、逐次本社に報告され、分析する。そこで得たデータを元に企画した商品は2~3週間で生産され、物流センターに届き、個別の店舗からの発注に応じて週2回のペースで送る商品のどこかに組み込まれる。

 高頻度、短サイクルで商品を供給するために、今も欧州とその近隣で6割を生産するわけだ。残り4割のアジアなど物流拠点から遠い地域にはトレンド変化が少ない、ベーシック商品の生産を割り当てている。集荷、配送までの時間はかかるが、ある程度シーズンごとの販売量が予測できるため、遠隔地の生産では調達コストと品質のバランスを優先していると言える。


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