昨年に引き続き、世間の編み物ブームは衰えを見せない。ただ、手芸好きの記者の中では熱が少し冷め、代わりに今はビーズクロッシェに夢中だ。あらかじめビーズを通した糸をレース針で編み立てるもので、細い糸と小さなビーズが形になっていく過程、手を動かすたびに輝くビーズの美しさがたまらない。
まだ始めたばかりで完璧な作品は作れないが、少しゆがんだ編み目や模様は、かえって心を落ち着かせてくれる。大量生産にはない、手のぬくもりが感じられるからだ。うまくいかなくても、解いて再び編み直して――そんな作業を繰り返しているうちに心が安らいでくる。自分の手で何かを作ることは、完成品を買うよりもずっと豊かな時間を与えてくれる気がする。
テキスタイルや製品の分野でも、クラフト感や一点物の価値を重んじる動きが広がっている。統一された完成品ではなく、唯一無二の風合いや表情にひかれる人が増え、そこに新しい可能性も芽生えている。
きらめくビーズをつなぐように、小さな手仕事の積み重ねが、次の時代の感性を編み上げていくのかもしれない。
(果)
