時代ごとに名経営者とされる人物がいる。精密モーター大手のニデックを創業した永守重信氏もそうだった。28歳で独立し、一代で売上高2兆5000億円を超すまでに成長させた。買収した赤字企業を必ず黒字にする手腕は「M&A(企業の合併・買収)の魔術師」とも呼ばれた。
「情熱、熱意、執念」「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」の企業精神で知られ、ハードワークで限界を超えることが同社の強さの源泉だった。が、昨年に会計処理への疑義が生じ、不正会計が発覚。猛烈な働き方を強いる企業文化がその原因であることが明るみになった。
3月3日に公表された第三者による調査報告では、社内のプレッシャーの強さを物語るエピソードにあふれている。例えば利益への固執。「赤字は悪」は一般的な経営の共通認識だろうが、同社における〝赤字〟は営業利益率10%未満のこと。上場する国内製造業の営業利益率が7~8%ということを踏まえると、いかに高いハードルを課されていたかがわかる。
厳しさが一概に悪いこととは思わない。だが、相互の信頼の裏付けがない厳しさはハラスメントと受け止められても仕方がない。時に厳しい顔を持つ経営者だったホンダ創業者の本田宗一郎はワイガヤという自由闊達(かったつ)な場を設け、自らへの批判を良しとした。時代を超えて耐えうる経営者の器が試される。
