漫画の市場規模は約7000億円。電子コミックスの売上高が初めて紙の単行本を上回った17年までは4300億円あたりで低迷していたが、コロナ禍の20年からⅤ字回復を見せた。この数字を単なる「巣ごもり特需」や「電子化」という言葉で片付けるのは本質を見誤る。
躍進の正体は、紙の雑誌という「パッケージ」の崩壊を受け、制作現場が断行した分業制とデータドリブンへの、冷徹なまでの自己変革にある。一人の天才の筆致に依存する時代は終わったのかもしれない。
脚本や着彩を切り分けたスタジオ型制作や、3D・CGアセットの活用。これは、熟練工の不足や物理サンプルの山にあえぐアパレル製造にとって痛烈な示唆に富む。特定個人の技能を聖域化せず、工程を徹底してモジュール化し、シミュレーション精度を高めてリードタイムをそぎ落とす。その姿は製造業の生命線そのものだ。
雑誌が作品を選別する「ブランドのフィルター」へ変じたように、現場に求められるのは受託を超えた編集機能への進化だ。漫画界の勝ち筋は、変えられないと信じていた「職人魂」の定義をも、根底から書き換えたと言える。
(樹)
