ブランディングという言葉がくくる範囲はあいまいだ。しかしそのファジーなものこそが、市場では大きな価値を持つ。
あるラグジュアリージュエラーのトップは「それは継承し、アップデートしていくもの」と話す。これはうちらしい、これはらしくない、やるべき、やるべきでない。その判断基準は「感覚的で職人のようなところもある」。イベント会場に飾る生花のアレンジメント一つにもその目配りは欠かせない。「入社1年目のスタッフに理解してもらうには難しさもある。時間はかかるが、これはそういうビジネスだ」と。
こうした意識は企業の大小を問わない。第一線で活躍するクリエイタージュエリーのPR責任者が「展示会ではどんなお茶菓子を出すべきか。やっと若手の子も分かるようになってきた」などと話していたのを思い出す。
高いクリエイションや品質を中核に、店舗、接客、販促はもちろん、無意識で感じるレベルまで、ブランドの世界に浸れる舞台装置をいかに作り上げるか。その積み重ねが信頼となる。「神は細部に宿る」というのは、こういうことなんだなと思う。
(維)