昔ある企業へ取材に行った時に、商談テーブルで、きつい口調で電話しているその企業の社員を見かけたことがある。取材後の帰り道、同行していた先輩が「さっきの電話、仕入れ業者に対してだろうね」と話したのを今でも覚えている。
先日取材した国内縫製工場の経営者は、ある企業のオーダーを断った。今後仕事は受けないという。話を聞くと、その企業の窓口の担当者が「完全に上から目線で話をしてくる」という。「このオーダーはこの納期じゃないと困る」「寝ずにでもやって」というスタンス。話をする時も「基本的にため口」なのだという。一度ビジネスでその工場がミスした時には「脅迫まがいのメールが来た」。訴訟も頭をよぎったという。
社名を聞くとかつて私が電話口で厳しい言葉で話しているのを見聞きした企業だった。業界外の人も多くが名前を知っているであろう大手企業である。
その工場経営者は話す。「仕事は人から始まる。あくまで対等。困っていたら助けて欲しいし、相手が困っていたら、助けてあげたい」。
(森)