取材先で「自分の代でやめるつもりだ」という経営者に出会うことがある。先日取材したテキスタイルメーカーは培ってきた技術力でまねのできないオリジナル生地を企画していたが、「承継に前向きではない」と漏らした。惜しいと思った。
先日、地域資源や文化を活用した商品開発、ブランド事業などに取り組んできた人の講演に行った時、「地域文化を継承するだけでなく、収束の手伝いをすることも事業の一つ」と話していたことが印象的だった。継承はもちろん大事だが、その仕事が重労働だったり、時代に合っていなかったりすることもある。そうした事情を踏まえた上で、技術が消えてしまわないよう資料や写真、動画などで技術を残す手伝いをするのだという。
素晴らしい技術を目の当たりにすると、継承ばかりに気を取られてしまう。しかし収束するのも、決断に至った背景があるはず。その決断に敬意を払いつつ、培ってきた技術や知恵をどう後世に残せるか。惜しむだけでなく、できることがあると気付かされた。
(桃)