《視点》Ⓐ先生をしのんで

2022/04/14 06:23 更新


 藤子不二雄Ⓐさん(安孫子素雄さん)が亡くなった。先生の代表作は何といっても『まんが道』だろう。コンビを組んでいた藤子・F・不二雄さん(藤本弘さん)とプロ漫画家を目指し、富山で実力を蓄え、上京後はトキワ荘で駆け出しの漫画家らと奮闘するさまを描いた。

 同作品で最も印象深いのは、大量の原稿を落としてしまうエピソード。帰省で気が緩んでしまい、当時抱えていたいくつもの連載や別冊漫画の締め切りを守れなかったのだ。一時は漫画家の夢をあきらめるが、先輩漫画家の寺田ヒロオさんの叱咤(しった)激励を受け、2人はもう一度夢に向かう。2年ほどの低迷期を経て再び人気が出て、同じように締め切りに間に合わない状況に直面するが、担当編集者と相談しながら、進行をきちんと管理していくようになる。

 どんな仕事にもデッドラインはある。ベストを尽くすものの、どうしても間に合わないのなら、関わる相手に状況を正直に説明し、最善策を探る。まんが道のこの話から学ぶ読者は多い。ご冥福をお祈りします。

(潤)



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