《視点》リアル展は消えない

2022/04/08 06:23 更新


 先日、欧州のインポートテキスタイルが一堂に集まるJITACヨーロピアン・テキスタイル・フェアで、ある有名ファッションディレクターを見かけた。20代とおぼしき部下を1人連れ、初日の午前10時には入場していたように思う。午後2時を過ぎてもまだいらっしゃったのには驚いた。欧州のテキスタイル見本市に行くことがかなわなかったという理由もあるのだろう。しかしながら、国内で開かれるテキスタイル展示会で、あんなに長い時間滞在する人を見たのは初めてだった。

 最近テキスタイル展示会を取材していて、来場者の滞在時間が長くなっているとよく聞く。コロナ禍で対面のコミュニケーションが制限され、テキスタイルもオンラインで閲覧・サンプル請求できるツールが広がったが、その一方で、リアルな体験価値の重要性を再認識する人が増えたのではないか。

 テキスタイルは、肌触りやしなやかさ、ハリ・コシ、重さなど五感を使った身体的な体験でしか得られない情報が多い。シーズンのムードを感じ取ったり、作る服のイメージを膨らませるのも、その体験があってこそ。今後もリアル展はなくならない。そう確信している。

(侑)



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