「正直、めちゃくちゃ心が折れています」とはある販売員。専門店取材でのことだった。「店にお客さんは徐々に戻ってきてくれていますが、悩まれる方がとても多いんです」という。ニーズを色々な切り口で引き出す努力をするが、客は「んー」とあいまいな反応のようだ。ならばとスタイリング提案をするが、結局購入につながらなかったり、取り置きのまま戻らなかったりで「これだけ時間を割いて丁寧に接客したのにって悲しくなります」と本音がもれる。
「『何を購入したいのかが分からない』というお客さんが多い」との声は他の店でも。一方で「毎シーズンあるある」だがトルソーに着させた服は売れている。
服を売るのが難しくなっているが、「何げない会話や、時間、サービスを提供できるのが実店舗の良さだとつくづく思う」との声もある。今、市場で実店舗の価値が改めて見直される動きがあるが、実店舗は販売員の魅力があってこそであるし、接客は販売員の腕の見せどころだ。店頭で色とりどりの服に心がおどり、販売員との会話に花が咲く。そのような体験を楽しむ気持ちが少しずつ戻ればいいなと願う。
(麻)