母方の祖母は80歳を過ぎた今でも現役の商売人だ。岩手県の北部、海と山々に囲まれた三陸の小さな村でもう半世紀ほど、商店を切り盛りしている。現役とはいえ、だいぶ足腰が弱り、叔母と二人三脚というところだろうか。
店は村役場の前にあり、海からは徒歩圏内で、車を走らせれば5~10分で着く。かつては海水浴客でにぎわったと聞くが、今は店も村もひっそりとしている。それでも祖母は「村の人の顔を見られるのがうれしい」と店をたたまない。祖母の村も過疎化の問題は例外でなく、少しでも村民の交流が途切れないようにと願っているのかもしれない。あの優しい笑顔は人に変わらない安心感を与える。
「人生は天気のようなもの」と教わったのはその祖母からだ。でも、人生は天気予報のように良いことも悪いことも予測できないことがほとんどだ。雨が降りやまない時は、あと何日で天気が回復するのかわからず、それがもどかしい。
だが、どんな状況もとらえ方次第で違って見える。例えば、雨は時に人を憂鬱(ゆううつ)にさせるが、雨上がりの街並みの美しい様を思うと雨も悪くないなと思えるように。いつでも強くしなやかに今を生きたいものだ。
(麻)