決算シーズンが終わり、紡績の繊維事業は一様に厳しい結果だった。米中摩擦や消費増税、暖冬による衣料品消費不振など逆風が続いた昨年度。コロナウイルスの影響もダメ押しとなった。今期の見通しはほとんどが未定で、回復は来年度以降と、影響の長期化を予想する企業も多い。
しかし、経営者からはこうした状況をビジネスモデル変化のチャンスととらえる声も多く聞かれた。「ただ商品だけを売る従来型のビジネスは限界を迎えており、コトやサービスといった付加価値を提供するメーカーにならないとこれから先、生き残っていけない」というわけだ。
縮小が続く国内紡績だが、安定した製品の品質を実現する上で紡績の果たす役割は少なくない。最近ではマスクや抗ウイルス加工素材などで注目を集めており、アパレルや消費者にアピールを強めていく好機でもある。厳しい環境は変化を後押しするはず。素材を軸とした新たなビジネスの展開に期待したい。
(騎)