《視点》リハビリ

2019/08/22 06:23 更新


 あるアパレルメーカーは新規事業でカフェを始めた。焼きたてパンを早朝から提供、テイクアウトしても、ゆったりとした店内で食べても良い。ランチもこだわっていて、今では遠方からも来店がある人気店だ。先日そのアパレルの社長を取材した際、「来週からグループ会社の社員が1人異動し、カフェで働く」と教えてくれた。その人の異動理由はどうやら仕事のプレッシャーだったらしい。

 アパレルビジネスが高度化する中、営業やMDなど働くスタッフのストレスは計り知れない。様々なアパレルを取材してきたが、体調を崩し、退職に迫られた人を何人も見てきた。

 「今は人に干渉されずパンを焼いて頑張れば良い」と社長が話す今回の異動は、ある種リハビリの意味もあるのだろう。雇用を守れるし、環境を変えて心身がリフレッシュ出来れば、本業のアパレルに戻り、前以上の力を発揮してくれるかも知れない。向いていると思えば、そのままカフェで奮闘する道もある。貴重な人材をどう守り、支えるのか。新規事業は収益だけでなく、そういった観点も大切だろう。

(森)



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