先日会ったアメリカ育ちの若手日本人デザイナーの話は、なんとも熱っぽくて心をつかまれた。彼が手掛けるのはカラフルなグラフィックのマフラー。ストリートテイストのやんちゃなデザインは、スケーター男子やその彼女にぴったり。センスが良くて都会的でしゃれていた。まずはそのデザインが目を引き付けるが、よく見るとどうもそんなに単純ではない。グラフィックに組み込まれているのは、紛争地の写真や強いメッセージ。デザイナー自身が今、社会に伝えたいことを切り取っている。売り上げの一部は取り上げた問題をサポートする団体に寄付し、ゆくゆくは貧困地域の人に向けて学校や生産基盤も作りたいと言っていた。
社会派ブランドが珍しいわけではない。彼の強みは、考えを国内外さまざまな場所で語って、意義を感じてもらい協力を得る力にある。約2年で多くの人の賛同を得て、生産や販売の体制を整えてきた。25歳の若者のその行動力たるや。アメリカ育ちならではのプレゼン能力の高さもあるが、そこに信念があるからこそ言葉が際立つ。成功の可能性だけでなく、情熱がファッションを面白くするのを実感した。
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