《視点》人に優しく

2018/09/05 06:23 更新


 「提案は良かったんですけどね。仕方なく落としました」とは、ある大手素材メーカーの社長の言葉。このメーカーが広告のコンペを行ったとき、参加した大手代理店からメールでデータが送られてきたのだが、月曜日の朝6時というメールの受信時刻が気になったという。「休日返上でやっていたのではないかと思った」とのこと。社員の働き方について問題が指摘されていた企業なだけに、その企業姿勢がマイナスに受け取られてコンペは落選した。

 実際に休日返上だったのか実態はわからない。とはいえ、「休みも取れない労働環境」という企業イメージがクライアント企業に悪い印象を与え、勝機を逃すことになってしまった。

 昨今、ESG(環境、社会、ガバナンス)に関わる企業の非財務情報が投資における重要な判断基準になってきた。日本では、環境に配慮した企業活動はこれまでも積極的だった。一方、長時間労働は少なくないし、この間は品質面での不正行為の発覚も目立ち、一部の大企業で隠ぺい体質が浮き彫りになった。人に優しく、社会に対して誠実であろうと努め続けることが、企業を持続させる上でより一層重要になっている。

(嗣)



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