日々の取材で「服が好きだったのかも」と気付かされた。学生時代の朝の決まりは服を眺めること。その日に出掛ける場所、会う人を思い浮かべ、どれを着ようかと悩む時間が幸せだった。トレンドやブランドには関心が低かったが、自分なりのファッションを楽しんでいた。
社会人になって2年目。その習慣がなくなったわけではないが、無意識に仕事のTPOを優先するようになった。服を買いに行っても、「なるべく控えめなもの」と無難な色とデザインを選ぶことが増えた。気付かないうち、「服が好き」な気持ちは薄れてしまった気がする。
地方出張で、ある若手デザイナーとこんな話をした。「ただやりたいことをやるだけではだめ。けれど、市場にこびずに自分が心から楽しいと感じるものをクリエイトして、それが人に受け入れられたらとてもうれしいし、次の原動力になる」
その言葉に心を打たれたのは、若手デザイナーの真っすぐな情熱が伝わってきたからだと思う。人を動かすのも自分自身を動かすのも最後は気持ち。時には自分の心の声に耳を傾け、素直な気持ちを大切に持ち続けたい。
(麻)