「依然、デフレ傾向にあり、格差は拡大している。店頭の苦戦は今後も続くだろう」。大手服地コンバーターのトップの言葉だ。10年、15年という期間でみても主要な先進国の中で国民の所得が増えていないのは日本くらい。店頭の苦戦はそのままコスト削減につながり、産地やコンバーターなど中小企業の多くが業績の悪化に苦しんでいる。加えて「このままでいけば100年後には日本の人口は3分の1になる。国内市場が拡大する公算は少ない」。
AI(人工知能)やロボットなど最先端の技術革新が進む一方で、人口は減り、人手不足は深刻化しているが、市場はどんどん縮小していく可能性が高い。インバウンド(訪日外国人)頼みや輸出で乗り切ろうという動きも為替の変動や国際情勢の変化などによる不安定要素が多く、安定した見通しは立てにくい。「繊維産業は長期的にも八方塞がりの状況にあるのではないか」とも。
もはや一企業の努力、自己責任の範囲では解決できない構造が見え始めている。先のトップは言う。「日本の経済政策、社会保障政策の見直しが急務ではないかと」。圧倒的に多くの中小企業で構成される繊維産業。自己責任の意識を超えて物申すべき時期ではないか。
(英)