「バイヤーがどう反応するか」。ある量販店向けアパレルメーカーの役員が小声で話した。同社はこの間、接触冷感など機能素材を使った提案が多かった。だが「アパレル企画の原点は機能ではない」と考え、この12月展では色柄、ディテールで鮮度ある企画を打ち出すという。
消費者が服を買うときは実店舗であれ、インターネットであれ、〝入り口〟はビジュアル。外観が気になれば、店頭なら手に取り、そこでラベル表示を見てようやく機能が付加されていることに気づく。言わば機能は最後のひと押しで、そもそもデザインが優れていないと、手に取ってすらもらえない。言わんとするのはこういうことだ。
衣料不振で目新しい企画は「実績がない」とアパレルメーカーも小売りも敬遠してきた。逆に機能素材の提案は説得力もあって、バイヤーもそれに乗ってきた。しかし、そもそも消費者が機能を求めているのか。機能提案は売れ筋企画を作れない業界の〝逃げ〟ではなかったか。先のアパレルメーカーはそう感じたのでは。
さて、12月展は既に始まっている。バイヤーの反応を聞くのが楽しみだ。
(森)