日本洋装協会と全日本洋裁技能協会が主催する、年1回の「全日本洋装技能コンクール」をご存知だろうか。文字通り、洋装技能の向上や技術者の育成を目的とするもので、省庁や商工会議所、服飾専門学校なども後援している。
この実際の作品のモデル着用による審査会の審査員を、記者も務めている。カッティング、ディテールや装飾も含む縫製技術など、評価するのはとても難しい。実際に着る洋服だから、そのデザインセンスと、エモーショナルな部分に訴えかける何かを感じないと点数にしにくいのだ。
とはいえ、何年もこの審査をしていると、とにかく一針一針の持つ力をなんとか引き継いでいかなければならないという気持ちが強くなる。その仕事の魅力を知る機会は今、あまりにも少ない。
今年の審査会には、主催者が意識的に取り組んだ成果で、若い人の作品もあった。そう聞かなくても作品を見れば若い人のものだと分かるデザインに、うれしくなった。技術ではベテランにかなわないのは当然だが、作品は愛らしい力を持っていた。来年はもっと増えることを期待する。(赤)