ヴァレンティノ 東京でプレフォールコレクション

2018/11/30 10:59 更新


 すっかりショー会場の定番となった寺田倉庫に、黒塗りのハイヤーが続々と乗りつける。世界中からプレスや顧客を集めて、「ヴァレンティノ」が東京でプレフォールコレクションを見せた。ピアノの静かな生演奏から始まったショーに、ヴァレンティノを象徴する赤のドレスが次々と登場する。プリーツとカーブ、ティアードディテールの布の重なり、レースの静かな装飾。赤のドレスを彩る繊細な布が風をはらんで揺れる。

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 日本の美の特徴である不完全さや静寂の「間(ま)」というのがコレクションのコンセプトにある。不完全さや間といえば、コムデギャルソンの川久保玲のデザインに象徴される。17年に開催されたニューヨークのメトロポリタン美術館のコムデギャルソン展のタイトルも「間(はざま)の技」。そのオープニングイベントでピエールパオロ・ピッチョーリ本人も見かけた。当時から日本の美のあり様には関心があったのであろう。今回のドレスのシルエットやハンドクラフトのディテールからも、どこか「コムデギャルソン」や「ノワール・ケイニノミヤ」との共通の美を感じることができる。

 ピッチョーリが今回のコレクションで取り入れたもう一つのポイントが、レッドカーペットを日常の服に取り入れること。ストリートのリアルとクチュールテクニックの間(はざま)のデザインだ。赤いドレスの中にまぎれ込む大きなフラップのワークジャケット、フラワープリントのダウンケープ。メンズの柔らかなラインのスーツスタイルにもレトロタッチのスニーカーを合わせて見せた。プレタポルテのメインコレクションやオートクチュールのため息の出るような美しさに比べるとシンプルにも見えるが、これが最も稼ぐべきプレコレクションのあり方ということであろう。しかし、リアルに着られる服の中にも、きっちりとヴァレンティノらしさとコンセプトが貫かれている。

(小笠原拓郎、写真=大原広和)




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